再雇用社員は元上司… ※この画像はAdobe Fireflyで作成したイメージです
再雇用社員は元上司… ※この画像はAdobe Fireflyで作成したイメージです

40代半ばで管理職のAさんは、69歳で再雇用されたBさんとの関係で頭を悩ませていました。BさんはかつてAさんのポストにいた人物で、ほかの社員への口出しが絶えません。

時短勤務の社員には「私のころは姑と同居して我慢したのよ」といい、仕事帰りに自己啓発のスクールに通う社員には「プライベートなことは土日にすれば?」という発言をし、多くの社員から反感を買い続けています。

これに対してAさんは、Bさんを注意しなければと考えるのですが、相手はかつての上司だったため、上手く注意できないでいました。そこでAさんが取った策は、別の再雇用社員であるCさんを介してBさんに注意を伝えるという方法でした。

ところがこの対応を見たAさんの上司は「指導を他人に丸投げしている」として、Aさんを注意し、今後は自身でBさんに注意するように言われてしまいます。今後Bさんへの対応を、Aさんはどうするべきなのでしょうか。社会保険労務士の小島朋子さんに話を聞きました。

■「元上司だから」は通じない、再雇用後も指導は管理職の義務

ー再雇用社員に対して管理職はどこまで注意できるのでしょうか?

再雇用社員でも、管理職はふつうの社員と同じように指導や注意ができます。「昔の上司だから」「年上だから」という遠慮は法律上まったく意味がありません。再雇用後も嘱託社員などとして雇用契約を結んでいるので、その会社のルールに従って働く義務があります。

雇用契約を結んでいる以上、年齢にかかわらず企業への労務提供は義務であり、問題のある態度を放置することは職場全体の士気にも悪影響を与えます。Bさんが「かつての上司」であっても、今は部下です。管理職には、きちんと指導する権限も責任もあります。 

ー指導を第三者に依頼することは「丸投げ」として問題になりますか?

別の再雇用社員を通じてBさんに注意を伝えようとしたのは、やり方として問題があります。会社と従業員の間には「指示を出す側・従う側」という関係があり、その指導はあくまで管理職が直接おこなわなければいけません。

間に人を挟んでしまうと、「誰が責任者なのか」がわからなくなってしまいます。上層部が「丸投げ」と判断したのもそのためです。業務上の問題への対応は、記録を残しながら順序立てて進めることが大切です。

ーミスが多い再雇用社員を解雇・契約終了できる条件を教えてください。

再雇用社員は多くの場合、1年ごとに更新する契約社員として働いています。ミスが多いからといって、すぐに解雇できるわけではありません。

能力不足を理由に契約期間の途中で解雇するには、その程度が著しく客観的に明白であり改善の機会を与えたが見込みがなく、解雇回避努力(配置転換など)が尽くされていることが必要です。実際には、能力不足が理由で解雇が認められるケースはほとんどありません。

また、高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保が義務付けられています。ただし、勤務状況が著しく不良で職責を果たせない場合や、就業規則上の解雇事由や退職事由に該当する場合は、例外的に契約を更新しないことが認められます。

ー他の社員へのハラスメント的発言への対処法はありますか?

まず取り組むべきは、発言の内容・日時の記録です。「いつ、誰に、何を言ったか」を残しておくことが、その後の対応の土台になります。記録が整ったら、その言動の何が問題なのかを具体的に整理したうえで、本人に改善を求めます。事態が深刻になる前に、早めに動くことが大切です。

ー再雇用制度の落とし穴と会社が整備すべきルールはありますか?

法律面での変化として、2025年4月からは継続雇用制度を利用する企業は、希望する社員全員を65歳まで雇用しなければなりません。これまでのように特定の基準で対象者を絞ることはできなくなりました。

業務内容や給料、勤務日数などの労働条件については、定年前と同じでなくてもよいのですが、正社員と比較して「不合理な労働条件」が禁止されます。

通常、有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、従業員の申込みがあれば、期間の定めのない雇用契約に転換(無期転換)しなければならないというルールがあります。しかし、定年後の再雇用は、都道府県労働局の認定を受ければ、上記の無期転換ルールの対象外とすることができます。

◆小島朋子(こじま・ともこ) 社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表
千葉県を拠点に活動する社会保険労務士です。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種ご相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認を承っております。会社と人との良好な関係を築くためのサポートをいたします。 

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)