神戸高専の食堂入り口に掲げられたネーミングライツのロゴ(提供)
神戸高専の食堂入り口に掲げられたネーミングライツのロゴ(提供)

 公共施設の命名権を売却する「ネーミングライツ」が近年、兵庫県内の国公立大学や高等専門学校(高専)で急速に浸透している。各校独自の財源確保に加え、学生が日常的に集まる場所にロゴなどを掲示することで認知度を高め、人材確保につなげたい企業側の採用戦略とも合致している。産学連携強化を期待する声もあり、今後さらに広がりを見せそうだ。(合田純奈、久保田麻依子)

 神戸大学深江キャンパス(神戸市東灘区)の食堂「NYKグループダイニング」では4月から、ネーミングライツを取得した海運大手の日本郵船(東京)の事業内容を紹介したパネルを壁一面に掲示する。写真を主体に、海上輸送や曳船などの仕事を視覚的に理解できるように工夫されている。

 食堂は多くの学生の目に触れる。海洋政策科学部2年の瀬戸伶音さん(19)も毎日利用し「見た目にもインパクトがあり、友達との話のタネになった。就活の時期になったら説明会に行こうと思う」と話す。

■神戸大は年間3千万円の収益

 公共施設のネーミングライツは2003年、東京都の施設を皮切りに導入された。兵庫県内でも「ノエビアスタジアム神戸」(神戸市兵庫区)や「ほっともっとフィールド神戸」(同市須磨区)など、市民権を得た施設の愛称も多い。

 国公立大学は04年に独立行政法人に移行し、国からの運営費交付金は20年間で10%超削減された。独自財源の確保を目的に、国公立大でも16年ごろからネーミングライツが順次取り入れられ、24年3月末時点で、全国91機関のうち46機関で行われている。

 神戸大基金課によると、同大では18年度から本格的に始め、これまでに17社19施設を契約。年間約3千万円の収益を得ており、他大学に先駆けた事例として注目が集まる。得られた財源は施設の改修費などに充てられる。食堂や図書館、共有の学習スペース「ラーニングコモンズ」など学生が多く集まる場所は、企業側の需要が特に高いという。

■地元密着の企業と契約多く

 学校施設のネーミングライツでは、愛称の定着以上に、学生に企業の事業内容をアピールすることに加え、地域貢献の一環として協力する狙いもある。県内では、県立大も24年から導入しているほか、高専においても急速に進んでいる。

 神戸高専(同市西区)では昨年4月に初めて2施設の契約を行い、今年4月までに計8施設に拡大した。いずれも県内や関西に拠点のある企業で、契約期間は3~5年と定める。

 食堂のほか、4年生の教室や実習工場には、企業のロゴや事業紹介のパネルが並ぶ。4月に新たに契約した5社のうち、物流システム製造の「オークラ輸送機」(加古川市)は、実習工場のネーミングライツを5年契約で結び「オークラ・ミライ・ラボ」と名付けた。

 同社では明石高専に次いで2例目。相次ぐ契約の背景には、高専卒業生の採用強化があるという。同社の担当者は「優秀な人材を確保するため、日ごろからロゴや事業内容を目にしてもらうネーミングライツは期待が大きい。共同研究など産学連携の面からも協力ができれば」と期待する。

 ネーミングライツに関する調査経験がある鳴門教育大の畠山輝雄教授(人文地理学)は、学校施設のネーミングライツ事業について「企業側にとっては認知度の向上やリクルートの一環で効果が期待され、特に地元密着の企業と契約する傾向がある」と説明。学校特有の課題として「例えば、入試における癒着が疑われるような教育関連企業の参画は、慎重に判断する必要があり、教育の公平性の担保が不可欠だ」と指摘した。