戦後75年企画 沖縄戦描く映画「島守の塔」
太平洋戦争末期の沖縄戦で、住民を守るために命を尽くした神戸市出身の元沖縄県知事島田叡(あきら)氏と、島田氏を支えた宇都宮市出身の元沖縄県警察部長荒井退造氏。それぞれの母校である兵庫高校と宇都宮高校の野球部の親善試合が23日、神戸市長田区寺池町1の兵庫高校であった。両校の保護者や卒業生も駆け付け、「2人の島守(しまもり)」を縁に今後も交流を深めていくことを誓った。(竹本拓也)
島田氏は旧制神戸二中(現兵庫高)出身。同中から大学まで野球選手として活躍し、1945年1月に最後の官選知事として赴任した。43年に警察部長となった荒井氏は旧制宇都宮中(現宇都宮高)出身。2人は県民の疎開促進や食料調達に尽力したが、戦禍の中、沖縄県糸満市摩文仁で消息を絶ったとされる。
平和学習を兼ねて、3年前から沖縄で荒井氏を顕彰する親善試合を続けている宇都宮高から打診があり、対戦が実現した。好走塁やサヨナラ本塁打が飛び出す白熱した展開で、1勝1敗で終えた。
沖縄では県高校野球新人大会の優勝校に「島田杯」が、準優勝校に「荒井杯」が贈られるなど、2人の名は球児らの心に今も刻まれている。兵庫高2年の竹本光之介主将(17)は「両校の諸先輩が引き継いでくれた人間関係のおかげでこの試合がある。ありがたい」と話した。球児たちは島田氏を顕彰する校門そばの「合掌の碑」を見学し、昼食や記念撮影でも友情を深めた。
宇都宮高からは村山二郎校長や野球部OBも観戦に訪れた。荒井氏の顕彰活動に関わる元応援団長早坂勝利さん(79)は、今回の遠征のため卒業生らに寄付を募った。早坂さんは「兵庫で試合ができたのは大きな一歩。今後は沖縄、兵庫、栃木の3県で交流試合ができれば」と期待を寄せた。 2試合分のスコアブックをうれしそうに見つめていた兵庫高同窓会武陽会事務局長の武蔵健児さん(70)は「とても感慨深い一日」と目を細めた。
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