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 首相官邸と道を隔てた総理府六階に、内閣情報調査室(内調)はある。十坪ほどの一室が、災害時、情報収集と官邸への連絡拠点になる。

 「関係者以外、立ち入り禁止」の部屋で、室員二人が交代で宿直する。コンピューター端末や専用電話、ファクスが並ぶ。国土、気象、防衛、消防、警察庁。全国から発生の一報がある機関とオンラインで結ばれる。

 「やれることはやっている」と内調幹部は言う。昨年十月に伊豆半島沖神津島で、震度5の強震が起きた。一報と同時にポケットベルで呼び出した職員約四十人が、官邸に駆け込み、直接情報が取れるよう機器など体制を整えたという。

 阪神大震災で、発生のファクスが、気象庁から国土庁に入ったのは午前六時七分。村山首相が、秘書官から「甚大な被害に発展する可能性がある」と報告を受けたのは、同七時半ごろだ。

 国土庁長官を本部長にした非常災害対策本部設置は午前十時すぎの閣議で決まり、ようやく対策本部会議が始まった。

 政府の対応の遅れについて、石原信雄官房副長官は「災害は一次的には国土庁長官。私も伝達ルートに入っていない。事態が深刻な場合、初めて総理になる」と釈明。国土庁とは別に、新たな官邸への情報伝達機能を、内調に持たせた。

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 十一月二十二日。参院本会議終了後、村山首相は記者団の問いに、いぶかしげな表情を浮かべた。「聞いてないからさっぱり分からんな」

 能登半島沖上空で同日午前、訓練中の航空自衛隊機が、ミサイル誤射で僚機に撃墜された。官邸には防衛庁の緊急ファクスで、発生から約十五分後に第一報、さらに一時間後に第二報が入っていた。

 野坂官房長官らは「単なる事故」と判断。首相への連絡も見送る。首相が事件を知ったのは、発生から約六時間半後、それも報道関係者からの質問によってである。

 昨年末、政府は官邸機能を強化し、危機管理体制を見直すことを明らかにしている。

 内調に「内閣情報集約センター」をつくることなどが柱で、同センターは災害対策専門家を中心にスタッフ約二十人。当直も四人に増やすという。

 説明にあたった野坂官房長官は「実際に能力が発揮できるよう、平素から十分に機能するよう心がける必要がある」と、自衛隊機撃墜事件の反省を込めるかのように話した。

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 橋本新政権が一月十一日スタートした。政権発足に先立ち、与党三党は書記長、幹事長レベルで新たな政策合意を結んだ。

 その一文に「総理補佐官の設置等を内容とする内閣法改正案を提出し、早期の成立を図る」とある。

 総理補佐官は「首相の指揮監督権が有効に働くため」と位置付けられるが、与党内でも意見は分かれる。「従来の首相補佐以上に権限を与えるべきだ」との声が上がる一方、「下手に権限を与えると、官邸内の調整に時間がかかる」と危ぐもある。

 国の中枢に当たる官邸で災害情報をどう扱い、判断を下すか。新進党は「のど元すぎれば熱さ忘れる、が村山政権だった」と批判する。官邸機能の見直しは、新政権にも課題になる。

1996/1/17
 

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