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(9)問われる基盤の活用策 息吹き返した情報都市構想
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 神戸・ポートアイランドの国際交流会館八階。この一日、オープンした神戸情報通信研究開発支援センターは、六つのコンピュータールームを備えている。

 静かな部屋にキーをたたく音だけが響く。コンピューター機器が机に置かれ、その風景は普通のオフィスと変わらないように見える。

 だが、「これだけの最新設備を自由に使える環境は大手企業にもちょっとないでしょう」と多田淳所長。個々のコンピューター機能、そのネットワーク。次世代をにらんださまざまな研究が可能だという。

 同センターは郵政省が三十億円をかけて開設、外郭団体の通信・放送機構が運営する。民間から研究テーマを募って審査、十一の大手、ベンチャー企業や個人が利用を始めている。

 情報通信の関連会社を設立した前田浩三さん(50)もその一人。神戸まつりをインターネットで実況中継することを計画。世界中からアクセスが集中した時の負荷の度合やクリアする方法を研究中だ。

 「貴重なデータを集め、実況中継機材の開発を目指したい。マルチメディア市場は世界規模だけにチャンスも大きい」と前田さんは言う。

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 震災後、郵政省が神戸市に投じた関連予算総額は百三十六億円にのぼる。

 支援センターのほか、同じ国際交流会館六・八階には、神戸リサーチセンターが六月にオープン。次世代デジタル映像通信に関する研究を進めるため、産官学のスタッフ約三十人がすでに活動を始めている。

 西神ニュータウンからポートアイランド、さらに六甲アイランドへと神戸の市街地を貫く総延長五十三キロの光ファイバー網も完成した。

 従来の銅線の千倍の情報伝達量を持つ光ファイバーを二百本束にした巨大な情報ハイウエー。市内二百八十の小中学校のコンピューターがつながり、三つのCATV網が接続した。

 重厚長大中心だった神戸経済は長期低落を続け、神戸市は産業構造の転換と活性化を目指して震災前の九四年、神戸国際マルチメディア文化都市(KIMEC)構想を打ち上げた。震災でとん挫したかに見えた構想は、国の支援で息を吹き返した。

 政府復興本部事務局は「二つのセンターは、政府復興委員会が提言した特定事業の先頭を切るプロジェクト。経済復興には成長著しい産業の誘致が不可欠だ」とし、市マルチメディア推進室の木村義秀室長は、国の「投資」を今後の復興につなげる責任の重さをかみしめるように話した。

 「結果的に巨大な情報基盤が出現した。こんな都市はどこにもない。このチャンスをどう生かすか。地元の意欲に懸かっている」

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 五日、兵庫県、神戸市と地元財界、大手四社のトップが経済復興を話し合う初めての「経済復興円卓会議」が東京で開かれた。

 神戸製鋼は「リサーチセンター」の延長線上にあるデジタル映像研究所設立に向け、企画調査会社を九月にも設立することを明らかにした。ダイエーはポーアイ2期のテーマパーク構想、川崎重工は新産業創造研究所(仮称)、川崎製鉄は東部新都心開発への協力を約束した。

 経済復興をめぐる論議は、「まず規制緩和を」とする地元と、「具体的な事業が示すことが先決」とする国が平行線をたどってきた。四社の表明は意欲を示す国への答えでもあった。

1996/7/17
 

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