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震災10年 守れ いのちを 第5部 復興とは

(6)共通認識 国の役割定まらぬまま
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 「被災者には責任がない。何らかの公的支援があるべき」 52%

 「国などにも責任はない。自分で負担するのは仕方ない」 12%

 自然災害の損失を補う責任を、誰が負うのか-。阪神・淡路大震災が私たちに突き付けた大きなテーマを、東北大学大学院法学研究科の院生が研究している。宮城県連続地震(二〇〇三年七月)で自宅が全半壊した二百八十世帯に聞き取り調査した。

 「国に責任がある」という答えは、7%にすぎなかった。予想に反した院生たちは、戸惑いながら、被災者の思いをこう読み取った。「責任論より、生活再建に実のある支援を」

 過去の災害は、多くの部分を義援金や自助努力に頼ってきた。調査結果は、国の役割について共通認識がない現状を反映した結果でもあった。

 指導教官の生田長人教授(公共政策)は元官僚で、政府の復興対策本部事務局次長を務めた。被災地の要望の中で唯一、議論の俎上(そじょう)に載せなかったのが「個人資産」の問題だったという。

 被災地にとって最も切実な個人の生活再建をめぐる議論は、国レベルのテーマとはなっていなかった。

 「現行法で対応できることはすべてやった」。復興における国の役割は何か。震災当時の政府関係者何人かにあらためて尋ねたが、返答はほぼ同じだった。「どこまでが復興なのか。線引きは難しい」という言葉も聞いた。

 震災当時の官房副長官で、現在、阪神・淡路大震災記念協会長などを務める石原信雄氏が振り返る。「気持ちとしては、壊れたものを元に戻す狭い意味の復旧ではなく、『将来を展望した復興を』という意気込みだった」

 補助率のかさ上げ、起債(借金)償還に伴う地元負担の軽減、補助対象の拡大-。「あらゆる特例を盛り込み、財政の論理の許容限度まで国の負担を認めさせた」ともいう。住宅の公費解体や復興住宅の家賃軽減など、阪神・淡路で初めて実現した施策があった。

 ただ、多くは現行法の拡大解釈や運用にとどまった。

 エンタープライズゾーン、自宅敷地での仮設住宅建設、店舗付き仮設…。法の枠組みにないそれら被災地の発想は、「前例がない」と退けられた。

 被災者ニーズは二の次だった、という感覚を抱く人が被災地には多い。

 復旧・復興事業の総事業費一六・三兆円のうち、半分を占める国費。その八割は前期五年に投入された。

 旧大蔵省から復興対策本部に派遣された田中正昭・都市再生機構理事は、「インフラの復旧までは現行制度がうまく機能した。しかし、個人の生活や地域産業の再生まで国がやらなければならないのか。合意は難しかった」と明かす。その復興対策本部も五年で解散した。

 そのころから、復興事業に伴う借金の返済で、被災自治体の財政は細る一方となった。生活基盤を失った被災者の体力も、年々弱っていった。

 被災地の本当の危機は、支援の潮が引いた後に訪れる。私たちの十年間の実感だった。

 「国と地方公共団体は、災害からの復興に努めなければならない」。災害対策基本法はそう定めるが、復興とは何なのかは、定義されていない。それを支える制度も未成熟なままだ。

 現行法を最大限に生かしても、被災者が復興の実感を得られないとすれば、法制度そのものに不備があるのではないか。その点を、兵庫県の震災十年検証は強調した。そして、国と地方の役割分担、財源の手当てなどを規定する「復興基本法」の必要性を訴える。

 既存の法制度に縛られ、暮らしに根ざした復興のあるべき姿を描ききれずに歩んできた十年だった。そしてまた、新たな災害が起きるたび、同じように苦しむ被災者の姿を見る。

2005/1/8

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