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【母の技 絶やしたくない】

 愛用の糸車は、母の形見です。震災をきっかけに私が引き継ぐことになりました。

 刺繍(しゅう)教室は明治期に祖母が始め、私は3代目。子どものころ、母の傍らで見よう見まねで覚えました。一針一針シルクの糸を通わせ、その光沢も使いながら植物や動物を表現します。光の芸術ともいえるかしら。

 震災で教室は全壊しました。母が避難先の東京で亡くなったのはその一カ月後。無理がたたったんだと思います。技を絶やしたくない一心で、再建した教室で後を継ぎました。当時は不安ばかりでした。生徒さんもわずかでお年寄りの方がほとんど。着物離れも進んでいましたし。

 でも、生徒さんが徐々に増えてね。今は約40人。若い人も多いです。震災で足元を見つめ、古き良きものを大切にする心が芽生えたのかもしれません。

 大きな災害があると、作品は残らないこともあります。でも、技はつなげます。「人の手に植えておくと、いずれ花が咲く」。生前、母が残した言葉を忘れません。(中西大二)

2014/4/19
 

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