【悔いのない毎日にしたい】
「長田がえらいことになっとる」。あの日の朝、知人からの電話で神戸市西区の自宅を飛び出しました。たどり着くと、母がいるはずの実家は見る影もない。穴を掘るようにして潜り込むと、布団をかぶって無傷でいたんです。奇跡でした。崩れたはりと鉄骨の隙間で助かったんです。入院中だった父が寝ていたら、どうなっていたか。
でも翌年に父、翌々年には母が他界しました。震災のショックも相当あったんやと思います。私は実家跡に家を建て、長年勤めた郵便局を辞めました。若いころからの夢だった喫茶店、1杯のコーヒーでくつろげる店をつくろうと決めたんです。
地元の景色は変わり、知り合いもずいぶん減りました。高齢で亡くなったり、家を再建できなかったり。それぞれ、大変な思いをした年月でした。
でも、店を始めたことで新たな出会いがあり、いろんな人と話せて楽しいですよ。今更もうけようとは思わない。だから肩の力を抜いて、毎日悔いのないようにやっていくつもりです。
(三浦拓也)
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