【平和と希望の舞 命の限り】
長田区の菅原市場で踊ったのは、阪神・淡路大震災の1カ月後でした。神戸は1989年から公演でお世話になっていた街です。踊りを通して犠牲者の霊を供養したいという一念でした。
でも、焼け落ちた町の空気に圧倒され、フリを間違えてしまった。これまで忘れたことなどなかったのに。「供養の舞はいらない。もっと生きたかった」という悲痛な声が、地の底から聞こえてくるようで混乱したんです。
未熟さを痛感しました。あれだけの人の死を、供養できると思ったおこがましさ。私の芸は自然界の念力を表す「鬼の踊り」と言われてきました。でも気付いたんです。私にできるのは、祈ることだけだと。悲しみを癒やし、平和や希望を表現する芸は神戸から始まりました。今の私の原点なんです。
1月17日は被災地に立ちます。菅原市場で最初に踊った時の写真を掲げ、水をかぶり身を清めて犠牲者と対話します。霊の思いを体現する踊りを通して、震災を知らない人にも犠牲者の無念を忘れないでいてもらうためです。両膝の半月板はくたびれ、ペースメーカーに頼る身ですが、心の衝動を体が受け止める限り続けます。(宮路博志)
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