【口腔ケア「教訓を常識に」】
目の前の光景が、ただ悲しかった。建物が崩れ、火災も起きたJR六甲道駅周辺。入居するビルは持ちこたえましたが、院内はぐちゃぐちゃ。配水管も破れて水浸しでした。
灘区では、約90ある歯科医院の多くが全半壊、あるいは全焼しました。自分の不安は胸に押し込め、歯科医師会の会員らと応急処置のできる拠点づくりを急ぎました。京都から診療車を借り、約1カ月間、地元の中学校で診察を続けました。
避難所では歯ブラシやうがい薬を配り、口の健康の大切さを呼び掛けました。でも、大災害を前に「歯磨きどころじゃない」という雰囲気は強かった。
後で分かることですが、震災関連死で最も多かったのは肺炎でした。中でも口の中の細菌が唾液と一緒に気管へ入って起こる誤嚥(ごえん)性肺炎が、かなりを占めていたと言われています。口の健康は命につながっていたんです。
東日本大震災では兵庫から歯科医が相次いで派遣され、応急処置や口腔(こうくう)ケアの指導、遺体の検視にあたりました。「非常時こそ、歯を大切に」。教訓を常識に変えたい。阪神・淡路を経験した一人として、そう思っています。(三浦拓也)
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