私は関西生まれ関西育ちである。中学3年の14歳まで。それから東京に移り住み、はや36年。数字に表すと、脳内の認識より強い衝撃を受ける。
大きな肩掛けバッグに薄い掛け布団を入れて上京し、渋谷を歩いた14歳の6月。当時のマネジャーに「大きな荷物は送ればいいのに」と言われた東京最初の日。渋谷のスクランブル交差点を早歩きで皆が渡るのを、大きな荷物を抱えながら「この人混みは加古川の花火大会みたいだ」と思っていた。
今では渋谷の交差点も早歩きで人にぶつからず、スラスラ歩けるように。春休みや夏休みに地方から人が集まり、混雑することにも「またこの季節が来たな」と受け入れる側の気持ちに立っている。
においだけで口にできなかった納豆も20歳を過ぎてから食べられるようになったし、うどんが黒いおだしに漬かっていることも認識できる。なんだったら、そばはしょうゆ寄りのつゆで食べる方が江戸らしくて好きだと感じている。
でもね。長く住んでいる東京でも譲れないことがある。それは「肉じゃがの肉」。関西は基本「牛」。初めて関東の友人宅で頂いた肉じゃがが豚肉で出てきた時の驚きは隠せなかった。考え方が悪いが「堅実な節約?」みたいな発想が生まれたぐらい。いかにも生活に余裕のあるお家だったので、そんなわけはないのに。お料理本と知人に聞いて知った事実は「関東は肉じゃがの肉は豚が普通」ということ。何度か豚で作ってみたが、出ているだしが違うので「豚肉のじゃが料理」。肉じゃがではない。
「普通」ということの違いだが、肉じゃがの肉は牛である。これは譲れない! 関西の血と胃袋がノーと言う。年月がいくら過ぎても、きっとこれにはなじめない。
【おおじ・めぐみ】1975年、加古川市生まれ。俳優。ドラマ「ひとつ屋根の下」の小梅役で注目を浴びる。「剣客商売」「京都迷宮案内」シリーズ、舞台「姫が愛したダニ小僧」など出演作多数。






















