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きらきらと青く輝く岩肌 国史跡・多田銀銅山に残る江戸前期の坑道

2021/05/20 05:30

 ヘルメットをかぶり、大人1人がようやく通れる狭い穴を進んでいく。兵庫県猪名川町南部の国史跡「多田銀銅山」の中で2020年12月、江戸前期とみられる坑道が発見された。特別に許可を得て入らせてもらうと、岩肌がきらきらと青く輝いているではないか。(斎藤雅志)

 アニメ映画「天空の城ラピュタ」で、老鉱夫の名ゼリフを思い出す。「夕べから、石たちが妙に騒ぎおってな…」。廃炭鉱の中で岩肌が青く輝くのは、空に浮かぶ城・ラピュタが近くにあるからだと。

 多田銀銅山は古くから銀、銅、鉛が採掘され、1973年に閉山。2001年に昭和期の坑道「青木間歩(あおきまぶ)」が公開され、15年に国史跡に指定されたが、全容はまだ不明な部分が多い。

 昨年12月、青木間歩の内部で補強材を取り換える作業中、岩でふさがれた開口部を作業員が発見。取り除くと、ぽっかりとした空洞が現れた。

 古い坑道の存在については掘削会社「日本鉱業」が残した図面が残るだけだった。松江工業高等専門学校(島根県松江市)の久間英樹教授らが「3次元レーザースキャナー」で中を調べると、穴の大きさは不規則で、機械を使わずに掘り進められていたことが裏付けられた。江戸前期の坑道と考えられるという。

 壁面に見られる青や緑色は、むき出しになった銀や銅、鉛の成分という。空気に触れて酸化し、変色していた。ライトで照らすと、石が「騒がしい」ように見えるのは、鉱脈を追い求めた人々の熱量を思わせるからかもしれない。

 空にラピュタはなくとも、一帯はかつて「銀山町」として栄えた。同町教育委員会によると、幕府直轄で繁栄した様子を描いた絵図も残っているという。

 坑道は立ち入れないが、青木間歩の中で、鉄柵越しに坑道の開口部2カ所を見ることができる。見学の問い合わせは多田銀銅山悠久の館TEL072・766・4800

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