「清酒発祥の地」として知られる兵庫県伊丹市鴻池地区で、江戸時代の酒造り誕生秘話をイメージした日本酒が出来上がった。2種類セットで名付けて「鴻池 親子酒」。清酒を造った山中(鴻池)新六と、戦国武将だった父・鹿介(しかのすけ)の絆を知ってもらおうと、地元で酒類販売を手掛ける住宅設備会社「ヱビス」(鴻池5)が、市内の2酒造会社に呼び掛けて造り「日本遺産の認知度向上を応援したい」と話す。(久保田麻依子)
親子酒はそれぞれ「新六」と「鹿介」と名付けた。新六は「小西酒造」(東有岡2)が手掛け、やや辛口で冷酒、熱かんどちらでも楽しめるオールマイティーな味わい。鹿介は「伊丹老松酒造」(中央3)が開発し、辛口で本醸造独特のうまさとコクが特徴という。
鴻池地区には江戸時代、新六が初めて「澄み酒」を醸造し、広く流通したことを伝える碑「鴻池稲荷祠碑」がある。父の鹿介は主家だった山陰地方の尼子氏が滅亡後、再興に生涯を懸けたが果たせず、34歳で死去。新六は武士の身分を捨てて1600年に清酒造りに成功した後、「鴻池屋」を名乗って海運業にも手を広げ、鴻池財閥の礎を築いたとされる。
「新六は、父の成し遂げられなかった思いを違った形で実現させたのではないだろうか」。ヱビスの会長坂本泰男さん(82)と、娘で広報担当の加計京子さん(54)は以前から、その親子の物語に関心を持ってきた。2010年に迎えた新六の生誕440年では、坂本さんが顕彰イベントの演劇で鹿介役を務めた。
昨年6月には「『伊丹諸白(もろはく)』と『灘の生一本(きいっぽん)』 下り酒が生んだ銘醸地(めいじょうち)、伊丹と灘五郷」が日本遺産に選ばれた。加計さんはこれを契機に、地元企業としてアピールに関われないかと考え、新六親子の物語をイメージした日本酒を商品化する企画を打ち出した。
日本酒のラベルには新六と鹿介をデザインし、商品とともに鴻池地区の歴史を紹介するパンフレットも添える。坂本さん、加計さんは「おいしいお酒を味わいながら、伊丹に伝わる日本酒の歴史や山中親子の物語に思いをはせてほしい」と語った。
親子酒はそれぞれ4合で「新六」は1900円、「鹿介」は1400円。2本セット(箱入り)は3500円。JR伊丹駅の観光物産ギャラリーやヱビスなどで販売している。
問い合わせはヱビスTEL072・781・1532









