尼崎市保健所の幹部がバイセクシュアル(両性愛者)の30代男性=依願退職=に対し、公務中のカミングアウトを控えるよう指導した問題について、当事者らはどう捉えたのか。性的少数者やその家族らの尊厳を守るために活動する大阪市の認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表(47)に話を聞いた。(聞き手・竹本拓也)
◆ ◆
-今回の問題はLGBTQらのコミュニティーにも衝撃を与えたと聞いた。
「一つは、異性愛者と性的少数者の『非対称』な関係があらためて浮き彫りとなったことだ」
-今回の問題の根っこには性的少数者を身近にいないものとする見方がうかがえる。
「そう。人々の日常会話は異性愛が前提となっている。例えば、異性愛者が薬指に指輪をはめるのは異性のパートナーがいるという表明で、それ自体がカミングアウトになっている。公務中に指輪をしている人はどんな職場にもいるだろう。そんな中で性的少数者にだけ『控えるべき』と求めるのはアンフェアだ」
-指輪を含めて、性的指向をどこまで明かすかどうかは本人以外がとやかく言うことではない?
「もちろん。ましてや、今回の問題で(退職した)男性は市民から聞かれたことに答えただけだ。性的少数者であるかどうかを問わず、プライバシーを守る権利は誰にでもある。その前提で、異性愛者は無意識に(性的指向を)明かしてきたということ」
-非対称性を感じるのは他にどんな場面があるか。
「同性パートナーが慶弔休暇や祝い金など福利厚生が使えない企業がまだまだ多い。子どもを育てている同性パートナーの場合は片方は親権者になれない。金融機関で共同ローンも組めない。税制では所得税の配偶者控除の対象外だ。法律婚と事実婚を比べても、圧倒的に事実婚が不利だ」
-今回の反響で分かったのは、性的少数者をどう受け止めていいか分からない層は確実にいる。
「カミングアウトされ、ネガティブな感情を抱く人は一定数いる。『身近にいるなんて知らなかった』という戸惑いや、出会った一人から受けたイメージを一般化して『イヤ』と思い込む人もいる。レズビアンと聞くだけで放送禁止用語と思ってしまう人も実際にいる。バイについては、性的に奔放だという特有の偏見も報告されている」
-なぜ、そのような捉え方になるのだろうか。
「生活者としての姿を想像できないから。同性間の交際と聞くと、性生活への好奇心が先行しがちだ。メディアなどの影響もあり、ポルノや水商売のイメージで語られてしまう。異性カップルは日常の暮らしをイメージできる。とはいえ、それに戸惑ったりショックを受けたりするのと、人前で性的指向を根掘り葉掘り聞くのは全く別の問題だ」
-今回カミングアウトを控えるよう指導したのが上司だったのをどう捉える。
「組織の中で、同僚と上司は社員や職員からの期待値が全く異なる。同僚であれば差別的言動に触れないという行動も『配慮』に当たるが、上司には直面した時に、差別を是正する役割が期待される」
-LGBTQについて学んでおらず、未知の問題にどう対応していいか分からない職員もいる。
「確かに今回の問題で上司は『対応を間違えてはいけない』『早く手放したい』というプレッシャーもあっただろう。ただ知識がないのであれば、私たちのような当事者団体へ相談するという方法はなかったのかと思う。それは(男性職員からの告白に戸惑って市に告発したという)市民団体の側にも言える」
◆ ◆
-カミングアウトという言葉や歴史を知っている人は、まだそんなに多くはないような印象がある。
「言わなきゃ分からないことをわざわざオープンにするのは、LGBTQが差別や偏見と闘ってきた歴史があるからだ。それを理解してもらいたい。カミングアウトは『自分たちはここにいる』『仲間もいる』という意思表示。一人一人の尊厳に関わる話で、それぞれが覚悟を持っている。性の多様性を表す虹色の『レインボーフラッグ』の各色には、セクシュアリティーや命、調和などの意味が込められている」
「LGBTQは宗教的な罪や犯罪と扱われてきた。時に『性的異常者』とのレッテルを貼られ、精神疾患として治療された過去もある。国が違えば現在もそういう状況だ」
-尼崎市の問題では、幹部が性的少数者であることを「借金や病気と同じような個人的な悩み」と一方的に捉えて「公務員として私なら(性的指向を)言わない」と述べていた。
「幹部の指導は、米軍にあった『ドント・アスク・ドント・テル(DADT=聞くな、言うな)』を当事者たちに想起させた。同性愛者の軍務が禁じられていた米軍で、同性愛者であることを尋ねたり公言したりするのを禁止した政策だ。現在は撤廃されている。LGBTQを借金や病気と同列に扱った幹部の発言は、こうした歴史を踏まえるとありえない暴言だ」
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-尼崎市は多様性への取り組みに熱心な自治体として知られている。
「尼崎市の職員が真摯に施策を進めてきたことは知っている。2013年にパートナーシップ制度を導入した大阪市の淀川区役所を尼崎市職員が訪ね、勉強する姿があった。淀川区では長い時間をかけて学習し、現場の末端まで施策を届けてきた。現在、性の多様性に関する研修は全職員が対象で講師も職員が務めている。職員がそれだけの知識を持っているということ」
「淀川区のように、どの自治体もそこまで積み上げる必要がある。特に窓口業務に当たる職員にはLGBTQへの基礎知識を持ってほしい。尼崎市は19年1月に制度を導入したばかりでまだ日が浅い。多様性の尊重を市として掲げていても、現場の末端まで浸透するには時間がかかる」
-尼崎市も職員研修をどう進めていくかに試行錯誤をしている。
「LGBTQが人口の何%ほどいるかを知っているという知識のレベルと、差別的言動があったときに反応できるレベルとの間には大きな隔たりがある。そこに達するには、当事者の話を聞き、さまざまな考えを受容しないといけない。知識が自分ごとにならないと、とっさの時にアクションを取れず、どうしていいか分からなくなってしまう。一方で当事者団体は増えてきているが、まだ小規模で、行政と一緒に行動するレベルまで至っていない。財政面での課題もある」
-今回の問題を受け、尼崎市長はLGBTQへの差別をなくしたいという姿勢や気持ちを「見える化」して支援する仲間を増やしていく方針を打ちだした。
「今回の問題にショックを受け、当事者が行政に相談に行けなくなることを懸念している。当事者にはもともとカミングアウトの壁があり、相談しにくいという調査結果が出ている。行政からは、当たり前のこととして相談に対応するというメッセージを強く出してほしい。報道側には、問題の報道とともに、相談窓口を伝えるなどの努力を求めたい」(聞き手・竹本拓也)

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