阪神

休校から45年後に廃校 川西・黒川小 ダム整備で校区水没、県内最古級の木造校舎

2022/03/04 05:30

 「日本一の里山」と呼ばれる兵庫県川西市黒川地区でテレビドラマの舞台にもなってきた市立黒川小学校が、1977(昭和52)年に講じられた異例の「無期休校」措置から45年を経て、ついに廃校されることになった。地域の子どもが減り続け、市教育委員会は再開の可能性がなくなったと判断。県内最古級の木造校舎などは2022年度に整備を始める「市黒川里山センター」(仮称)の一部になる。(久保田麻依子)

 市教委が3日の市議会厚生文教常任委員会で明らかにした。明治初期に設立した黒川小は、休校期間を含めて約150年の歴史に幕を下ろす。

 黒川地区では終戦の1945(昭和20)年をピークに人口が減り、77年には「一庫(ひとくら)ダム」の建設で校区の一部が水没することが決まる。既に児童は19人になっていた中、市教委は閉校を検討するも「子どもが再び増えたら再開してほしい」という地元の声に応えて無期休校とした。その後、現存する「北校舎」「南校舎」は公民館として活用してきた。

 しかし、昨年5月時点で、校区に小学中学年以下の児童や幼児はおらず、市教委は「将来的な少子化の傾向も踏まえると、再開のめどは今後見込めなくなった」と結論付けた。センターの整備に合わせて廃校する方針を地域の説明会で伝えると、反対意見は出なかったという。

 市によると、センターは拠点施設を新たに建設し、里山保全や観光推進のほか、避難所の機能も備えて2023年度の開設を目指す。校舎については公民館としての機能も廃止し、センターの一部として一体的に運用する予定という。

 ただし、南校舎については解体の可能性もあるとし「(来年度選定される)指定管理者からの提案を受け、市民にとって有用とされれば保存活用する」とした。

■境内の建物借り 明治6年に創立 NHK朝ドラのロケ地にも

 黒川小学校の「創立100年史」などによると、1873(明治6)年、黒川、国崎、横路の3村(いずれも現・川西市)が寺の境内の建物を借りて小学校を創立した。当初、児童は16人、教員は1人だった。その後、児童が増えると1904(同37)年に北校舎が建てられた。

 第2次世界大戦では疎開受け入れのために児童が急増し、終戦の45(昭和20)年は109人にもなった。このため翌46年には、北校舎と同規模の南校舎を増築した。

 しかし、戦後は過疎化が進んで児童も減り、77(同52)年に休校が決まると、東谷小学校と統合した。

 北校舎は現存する県内最古級の木造校舎とされる。2009年度には県の「景観形成重要建造物」に指定され、NHK連続テレビ小説「スカーレット」のロケ地にも選ばれた。

 こけむした石垣の上に木造校舎が立ち、教室の床や壁は板張り。使い込まれた木の学習机や便所、宿直室など、当時の学び舎(や)の面影を今に残しつつ、地域住民の交流や学びの拠点として長く活用されてきた。今も市内の小学4年生は「里山体験学習」の授業で毎年訪れるという。

 県教育委員会義務教育課によると、県内では黒川小のほか、2021年度から香美町立余部(あまるべ)小学校御崎分校が休校している。

続きを見る
阪神

あわせて読みたい

阪神

もっと見る 阪神 一覧へ

特集