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村上春樹さんがデビュー作の一場面のモデルにしたとされる打出公園の「猿の檻」=打出公園
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村上春樹さんがデビュー作の一場面のモデルにしたとされる打出公園の「猿の檻」=打出公園
檻の中には猿が遊んだタイヤなどが残る=打出公園
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檻の中には猿が遊んだタイヤなどが残る=打出公園
檻の中の猿を見る子どもたち=1960年代ごろ、打出公園(芦屋市提供)
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檻の中の猿を見る子どもたち=1960年代ごろ、打出公園(芦屋市提供)
檻にいたタイワンザル=打出公園(芦屋市提供)
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檻にいたタイワンザル=打出公園(芦屋市提供)
村上春樹のデビュー作の一部に登場したサルのおりがあった打出公園。建て替えられた後の2代目のおり=打出公園(芦屋市提供)
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村上春樹のデビュー作の一部に登場したサルのおりがあった打出公園。建て替えられた後の2代目のおり=打出公園(芦屋市提供)

 兵庫県芦屋市出身の作家村上春樹さんのデビュー作に登場する「猿の檻のある公園」のモデルで知られる同市打出小槌町の打出公園にある「猿の檻」について、撤去の是非を巡る議論が本格化している。今や巨大な檻だけが残り、市は「子どもが遊ぶ場を広くしてほしい」とする地域の意向を受けて撤去の方針を決定。しかし「聖地」として存続を求めるファンの声もあり、市議会は慎重さを求めている。(村上貴浩)

 「猿の檻のある公園、街はいつも同じだった」

 デビュー作「風の歌を聴け」はそうつづり、主人公が車で公園に突っ込み、檻の猿が腹を立てる場面も描かれる。今年は短編「ドライブ・マイ・カー」の映画がアカデミー賞に輝いたが、「風の歌-」は村上文学の原点となっている。

 ただ実際のところ、公園は1979年の出版時から様変わりしてしまった。

 芦屋市によると、当初いたのはタイワンザル7匹で、59年に芦屋動物愛護協会が寄贈したものだ。リスやクジャクもいて、近くの香櫨園小学校に通った村上さんをはじめ、地元の子どもたちに「ミニ動物園」として親しまれていた。

 しかし、猿の檻はそれから建て替えられ、2003年に最後の猿が死ぬと、10年にはすべての動物がいなくなった。鳥小屋などが撤去されても猿の檻だけ残ったのは「有名な小説の舞台になり、まちおこしに使いたい」という地元商店会の要望があったからだ。

   ◇   ◇

 檻は高さ4・6メートル、幅4メートル。今はパネルを掲げ、猿がブランコに乗って村上さんの「海辺のカフカ」を読むという絵を描いている。

 事態が動いたのは17年。市が23年の完了を目指して公園のリニューアル工事をするための検討を始めた。

 地元自治会が中心となって住民にアンケートをすると、檻はファンから存続を求める声があったが、7割が子どもの遊びスペースの確保などを理由に撤去を要望。さらに市のワークショップでは老朽化に加え、ボールが当たった際の騒音も地域問題として浮上した。

 これを受けて市は21年、撤去の方針を決定した。しかし今年3月、市議会は「住民アンケートはもっと慎重に、より広い地域から意見を聞くべきだ」とする陳情書を賛成多数で可決。これに対して地元側は改めて市長に撤去を要望するなど、議論が続いている。

 市は取材に「檻を残したい気持ちも分かるが、子どもが安全にのびのびと遊ぶためには撤去が必要」と説明。その上で「長い検討の中で、文化的価値も十分認識している。檻はモニュメントとして残す方法を検討している」と明かした。

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