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「今まさに暗中模索している人の役に立ってほしい」と話す中原美智子さん(左)と小林書店の小林由美子さん=尼崎市立花町2
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「今まさに暗中模索している人の役に立ってほしい」と話す中原美智子さん(左)と小林書店の小林由美子さん=尼崎市立花町2
後部に2人の座席がついた「ふたごじてんしゃ」
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後部に2人の座席がついた「ふたごじてんしゃ」

 「双子を育てているママたちに、私が感じたあの自由を届けたい」-。その一心で、日本初の子ども用三輪自転車「ふたごじてんしゃ」を考案した大阪市の中原美智子さん(50)が、その開発秘話や兵庫県尼崎市での会社設立、製品化への歩みを自著「ふたごじてんしゃ物語」(苦楽堂)にまとめた。11日には同市立花町2の小林書店でトークイベントがあり、自転車に込めた思いを語る。(広畑千春)

 中原さんは2010年、長男と7歳差で双子を出産した。外出もままならない「真っ暗闇」にいて、さらに苦しんだのが自転車だった。前後に子どもを乗せられる従来の「3人乗り自転車」は前後で大きさが違う。小さい頃は前はちょうどでも後ろは大きすぎ、成長すると逆に。常に危険を感じ、バランスを崩して転倒し、子どもをかばってけがをしたこともあった。

 後ろに2人を乗せられる自転車があれば-。そう思いついて試作機を作ってくれる業者を探し、ようやく完成しても製品化の高い壁にぶつかった。何度も断られ、ばかにされ、うまくいきかけては挫折した。

 「出口の見えないトンネルにいるようだった」。もう無理だと思うたび、しんどそうに自転車を押す母親の姿が脳裏に浮かび、心を奮い立たせた。

 16年に起業し、18年には大手メーカーOGK技研(東大阪市)の協力で商品化。国の自転車活用推進本部にも表彰された。その実績は「主婦・ママの起業成功例」として紹介されがちだが、今回の本は自身がつづってきたブログを基に、手探りで後戻りしながら進む姿をそのまま描いた。

 「私ができないことは周囲の人がしてくれた。1人ではなく集合体で成し遂げてきた」と中原さん。かつて街で走ると必ず振り返られた「ふたごじてんしゃ」も、今では誰も気にしない当たり前の光景になった。

 一方で、開発に携わったビジネスマンたちの中には、一緒に夢を追う中で「人間らしさを取り戻した」という人も。中原さんも社会福祉士の資格を取り、多胎児の親たちを支援するNPO法人を立ち上げた。そして次の目標をこう話す。

 「作りたいのは大人も含め、誰もが安心して後部座席に乗ることができる自転車。そして、どんな命の誕生も喜べる社会であり、『文化』なんです」

 11日には小林書店の小林由美子さんと語り合う。午後2時から。無料。小林書店TEL06・6429・1180

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