雌を争うハクセンシオマネキの雄たち。大きなはさみを使った投げ技が決まった=西宮市大浜町
雌を争うハクセンシオマネキの雄たち。大きなはさみを使った投げ技が決まった=西宮市大浜町

 干潟にすむ希少なカニ「ハクセンシオマネキ」が、兵庫県西宮市の夙川河口で繁殖期を迎えている。雄は巣穴に雌を呼び込もうと、白く大きなはさみを振る「ウエービング」でアピールしている。(吉田敦史)

 スナガニ科で甲羅の幅は約2センチ。雄のはさみは片方が白扇(はくせん)のように巨大化し、雌のはさみは両方小さい。2014年の県版レッドリストでCランクとされる。

 西宮市貝類館の学芸員渡部哲也さん(51)によると、夙川河口では07年から記録がある。潮が引き、干潟の砂が乾き始めると、巣穴から出てきた雄がウエービングを開始。1匹の雌ににじり寄った2匹の雄同士が争い、かみ合わせたはさみで豪快に投げ飛ばす場面もあった。それでもカップルは成立せず、渡部さんは「簡単には行きません。人間と同じです」と笑う。

 繁殖期は8月まで。雄は交尾後、抱卵する雌に巣穴を明け渡し、また別の巣穴を造って雌を誘うという。