ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、行楽シーズン真っ盛りの最中に、大手海外ホテルチェーンのネットCMが日本旅館をバカにしていると話題になりました。

 旅館にチェックインしようとしているカップルに、女将(おかみ)さんらしき人が、お風呂の時間や食事の時間などを立て続けに説明し、お客が戸惑っている光景が流れる。後半は一転して高級ホテルのラウンジでのシーンに移る。「お客さま、ごゆっくりされるならディナーの時間をずらしますよ」とスタッフが声をかけ「泊まる所で旅は変わる」とナレーションが入るという内容。「予定でいっぱいの休暇」とタイトルも付いています。

 旅館では行動を細かく決められるが、ホテルではゆっくり滞在できるよと訴えたい。いわゆる比較広告で、日本ではなじみが少ないので支持が得られなかったのか、不快に思う方が多かったのか、現在CMは配信されていません。

 欧米の人たちが、どこの国に行こうとも自国の文化や過ごし方をしたいと、自国の建設様式やインテリアでつくられたホテルがあります。コロニアルホテルと呼ばれ、明治時代の神戸オリエンタルホテルもその一つと言えます。外国人が持ち込んだホテルの料理がきっかけで、現在の神戸ビーフが世界へ広まりました。

 そして神戸に来た外国人は六甲山を超え、有馬温泉へやってきました。旅館では五右衛門風呂を楽しみ、女将は流ちょうな英語でボイルドエッグの好みのゆで時間を聞いていたといいます。また、有馬の旅館は押し入れを改造してシャワールームを備えたそうです。そのように、有馬は昔から日本人だけでなくいろいろな国の人を迎えてきました。

 旅の楽しみの一つが、異国文化に触れることだと思います。本物の日本文化を体験に来られる方も多いと思います。11月2日に有馬大茶会が開催されましたが、秀吉公に茶を供える「奉茶式」に上海から20人のお客さまが参加されました。驚いたのは1時間ほどの式の間、身動きもせず、正座をされていたことです。中国様式の着物の方もおられ、茶の湯の文化が世界に広がっているのを垣間見ました。そして今後の有馬を感じました。

 旅の目的は多種多様。一つの価値観を比較するものではなく、多様な楽しみ方を提供できることが、有馬が目指す国際温泉リゾート化です。そして提供するものが本物でなければいけないと思っています。さあ、まだ紅葉は大丈夫です。有馬温泉にお越しください!(有馬温泉観光協会)