クマによる人的被害が北日本をはじめ全国で相次ぐ中、兵庫県の西播地域や兵庫県姫路市内でも自治体や民間団体が対応に追われている。県内では今年、痕跡を含めた目撃件数が例年より少ないものの、山間部の市町を中心にクマに関する情報が市役所や町役場に次々と届く。各自治体などは近隣住民らの不安を払拭(ふっしょく)しようと、あれこれ対策を打ち出している。(まとめ・辰巳直之)
「ヒュー、パンッ!」。ロケット花火の破裂音が何度も山あいに響き渡った。11月下旬、兵庫県神河町などであったウオーキングイベント。主催者の一人、前嶋茂徳さん(70)が、コース上でクマの目撃情報があった地点を重点的に計15発の花火を打ち上げた。
過去の催しでもサルよけのために10発程度を打ち上げたが、今回は多めに。前嶋さんは「目撃数は減っているが、参加者に少しでも安心してもらいたくて数を増やした」と話す。
同町では今年、クマに関する通報が今月3日時点で17件あった。昨年の58件から大幅に減っているが、警戒態勢は続く。通報があれば、防災メールや防災無線の定時放送で町民に知らせたり、当該地域の区長に報告したりする。昨年には、町内の小中学生全員にクマよけの「熊鈴」を配布し、今年も新1年生に支給。捕獲用の檻(おり)も2個購入した。
一方、市域の9割を森林が占める兵庫県宍粟市。9年前に男性がクマに襲われて重傷を負ったほか、今年は市中心部にある恵比須神社(同市山崎町山崎)周辺などで30件超の目撃例がある。
こうした状況を受け、市は市内の全小中学生に熊鈴の配布を決めた。「クマは鈴の高音を嫌うため、突発的な遭遇を避けることができる」と市教育委員会の担当者。今月中旬までに計2520個を支給する予定だ。
西播北部の佐用町は、目撃情報が相次げば、柿の木を切るよう公式ホームページなどで勧告しているが、今年は実施していないという。佐用郡森林組合(同町佐用)では、クマが人間の食べ物の味を覚えてしまわないよう、森林で働く作業員に弁当の食べ残しなどを山に置きっぱなしにしないよう声かけをしている。
各市町は、クマの目撃例が今年は少ない点について「餌となるドングリの豊作が要因になっているとみられる」などと推測するが、今後も継続的な警戒は必要と認識。姫路市では、9月に施行された改正鳥獣保護管理法に合わせ、自治体が許可すれば住宅街でも発砲できる「緊急銃猟」の体制を整備した。今年の目撃通報がない兵庫県相生市のほか、兵庫県市川町、神河町、兵庫県上郡町などでも近く緊急銃猟のマニュアルを策定する方向だ。
























