春に花が咲く木といえば、やはりソメイヨシノでしょう。ソメイヨシノは学校や公園、街路など身近な場所でよく見る木の一つです。サクラ類の一種で、同属のエドヒガンとオオシマザクラを祖先とする種間雑種とされています。
ソメイヨシノはエドヒガンのように葉が展開する前に花が咲きます。花びらは5枚あり散るときは1枚ずつ落ちていきます。しかし昨年4月、花びらの下にあるガクと一緒に花がたくさん落ちているのを見つけました=写真A。その上方の枝先を見ると花の柄の部分が残っています=写真B。
ガク筒と呼ばれる部分でちぎれてその先の花全体が落ちています。犯人はスズメのようです。スズメが花を落としているところを運よく写真に撮れました。スズメの写真も撮れたのですが、よく見るとスズメの仲間のニュウナイスズメ=写真C=も写っていました。ニュウナイスズメ(雄)はスズメと違って頰に黒斑がなく、頭部と背面が明るい栗色をしています。
花を観察しているとハチ類やメジロ、ヒヨドリなどが訪れ甘~い蜜を吸っていました。それらは花粉を運んでくれますが、スズメやニュウナイスズメは、くちばしが太くて短く花の正面から蜜を吸うことができないのか、ガク筒の部分を横からちぎって蜜を吸って花を落としているようです。
ソメイヨシノの花が終わると緑色の葉が展開し始めます。その葉を観察すると葉柄(ようへい)の上部や葉身(ようしん)の基部などに、おちょこやおわんのような形の小さなものが1~2個あるのに気がつきます。葉が若いとき、そこから甘~い蜜が出ています=写真D。これを花外蜜腺(かがいみつせん)といいます。ではなぜこのような蜜を出すもの(蜜腺)が葉にあるのでしょうか?
実はアリ類を呼ぶためといわれています=写真E。羽根を持たないアリ類は、甘~い蜜に誘われて葉にたどりつくまでに地面から幹、太い枝、細い枝、葉柄へと順に歩きます。そうしている間に幹、枝、そして葉をパトロールすることになり、葉を食べる幼虫などを見つけて蹴散らしてくれたり、持って行ってくれたりするようです(そうだったら葉を守ることになるのでアリさんエライ!)。
余談ですが、餡(あん)が甘~い桜餅の葉はオオシマザクラを使うそうですが、その葉に蜜腺が見られることがありますよ=写真F。皆さん、身近なところで春の自然観察をしてみませんか?
























