地震や水害に備え、命を守るために必要な心構えや知恵をあらかじめ知っておけば、「いざ災害」の時に落ち着いて行動できます。神戸新聞の過去の紙面から災害時の対処方法を紹介します。
(2021年9月1日の神戸新聞より)
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▼火の始末 最優先にあらず
「まずガスこんろの火を止める」。地震発生時の行動の定番だが、あくまで余裕がある場合の話。熱湯や油が入った鍋、重い食器や包丁の落下、冷蔵庫の転倒…。台所は危険物が多く、無理に火を消しに行くとけがや閉じ込めの危険が増す。震度5相当以上の地震を検知するとメーターが自動的にガス供給を止めるため、火の始末は最優先とせず、揺れが収まってから落ち着いて対応しよう。
▼トイレの安全神話 疑って
転倒する家具などがなく、四方に柱があるトイレは家の中で最も安全だとされ、「地震が来たら逃げ込め」とされてきた。だが、マンションなどでは壁だけで柱が入っていない場合もあり、絶対ではない。ドアが変形して脱出できなくなる恐れもある。揺れを感じたら、落下物のないリビングや玄関などで身を守ろう。トイレで用を足している場合は、ドアを開けて閉じ込められないようにする。
▼固定した家具 過信は禁物
食器棚やたんすなどの家具を金具やポール(突っ張り棒)で固定するのは有効な対策だ。ただ、固定した時点で安心し、その後の点検がおろそかになりがち。年月がたってねじが緩んだり、器具が劣化したりしていることもある。東日本大震災では震度4以上の揺れが3分以上続いた地域があった。家具が徐々に移動して倒れるなど、固定器具が役立たない可能性もあるため、油断は禁物だ。
▼会社内コピー機“暴走”も
地震は自宅で起こるとは限らない。最新のビルが倒壊する可能性は極めて低いが、オフィス内では重さ100キロ超のコピー機が床を暴走し、キャビネットから大量の書類が落ちてくるかもしれない。キャスターを固定し、キャビネットには飛び出し防止器具を設置したい。ガラスが割れる恐れもあるため、窓から離れ、机の下などで身を守る。避難はエレベーターではなく階段を使おう。
▼給油所 爆発の可能性低い
地震が起きたとき、ガソリンスタンド(GS)は「爆発しそう」などのイメージがある。だが、消防法や建築基準法の厳格な基準を満たしており、火災や爆発の可能性は極めて低い。阪神・淡路大震災では、火災に見舞われた地域でもGSは燃えず、防火壁の役割を果たした場所もあった。資源エネルギー庁によると、自家発電設備を備え、停電時も給油できるGSが、全国に1万4千カ所以上ある。
▼繁華街 全方向リスクあり
地震発生時のオフィス街や繁華街は、看板や壁が頭上から落ちてきたり、固定されていない自動販売機が倒れてきたりするなど、危険がいっぱい。歩道に車が突っ込んでくるかもしれない。上下左右、全方向に注意を払い、リスクを減らすことが肝心。かばんなどで頭や首を守り、建物やブロック塀からは離れよう。揺れが収まったら、公園や広場などの安全な場所を探して移動する。
▼エスカレーター 昇降は危険
エスカレーターは、地震で自動停止するとは限らない。巨大地震では余震が続くため、揺れが収まっても、エスカレーターでの昇降は危険だ。駅ではエスカレーターの先の改札やホームなどが混雑していると、降り口で人が詰まって群衆雪崩が起きてしまう。公共交通の運休が分かっている場合は、「とりあえず」で駅に向かったり、駅で待ったりせず、滞留や混雑を防ぐことも肝心だ。
▼家具の下敷き 音でSOS
地震で家具などの下敷きになってしまったら、近くにあるスプーンや食器など硬いものでたたいて音を出そう。大声で助けを呼び続けると、体力を消耗してしまい、救助が来たときに大声が出ないこともある。水害で屋根の上に避難した際も、大声を出してもヘリコプターの救助員には聞こえない。人影を確認しづらい夜間は懐中電灯で光を出し、日中は傘を振るなどして知らせよう。
▼ヘッドレスト使い車脱出
台風や大雨のとき、車で冠水した道路に突っ込み、水没してしまったらパワーウインドーは使えない。ドアは水圧で開かないため、脱出には座席からヘッドレストを抜き、その軸棒を側面の窓とボディーの間に差し込んで、てこの原理で割る。車内が一定以上水没すると、水圧が下がり足でドアを蹴って開けられる可能性もある。いずれも最終手段なだけに、できれば脱出用ハンマーを備えたい。
























