貧困問題に取り組む一般社団法人「反貧困ネットワーク」(代表理事=宇都宮健児弁護士)は15日、貧困問題の優れた報道などに贈る「貧困ジャーナリズム大賞2024」の受賞14作品を発表した。本紙取材班の書籍「黴の生えた病棟で ルポ神出病院虐待事件」(毎日新聞出版)が貧困ジャーナリズム賞を受賞した。
本紙書籍は、2020年に神戸市西区の精神科病院で発覚した看護師らによる集団虐待事件を、神戸新聞記者たちが約4年間にわたって継続取材したルポルタージュ。新聞連載を基に、24年6月に書籍化した。
選評は以下の通り。
「精神病院に入院中の患者へのおぞましい集団虐待事件。その真相を追う中で、割り切れない、底知れない気味の悪さを感じた記者たちが、事件の背景を深掘りし、言語化の努力をした力作。精神病棟には日本社会の矛盾や病理が凝縮されている。
人間よりも利益優先。生産性に劣る者を、役に立たない異分子として差別・排除する。声を上げられない当事者の見えない存在。弱者が弱者を叩き、それが匿名性や同調圧力などにより強化される。虐待をしたのは特別な人間ではない。傍観していれば、カビのように足元に広がり、自分も加害者や被害者となる。貧困問題にも共通する構造を指摘し、組織や社会を見直し、私たちは何をしたらいいのかを考えさせる優れた作品である」
大賞には、毎日放送の「労組と弾圧-関西生コン事件を考える」と、鹿児島テレビの「いのちのとりで」が選ばれた。