尼崎JR脱線事故で兵庫県消防防災航空隊員として、負傷者の搬送に携わった三木市消防長の大東成吉さん=三木市福井
尼崎JR脱線事故で兵庫県消防防災航空隊員として、負傷者の搬送に携わった三木市消防長の大東成吉さん=三木市福井

 尼崎JR脱線事故では、兵庫県消防防災航空隊などのヘリコプター3機が重症者10人を病院に運び、9人が命を取り留めた。「空の救急搬送」はどのように行われたのか。搬送に携わった三木市消防長の大東成吉さん(57)は「消防の力は大きな災害や事故を経験するたびに培われる」。20年前のあの日の重みをかみしめる。(小西隆久)

 事故当時は航空隊の2年目。あの日は後輩の山火事訓練が予定されていた。格納庫でヘリの出庫を誘導中、突然「訓練中止」を告げられた。

 「尼崎で電車が脱線したらしい。情報収集に上がれ」。そう命じられ、準備にとりかかる。「負傷者がいるかもしれない」。応急処置セットに加え、心電図モニターや酸素ボンベも積み込んだ。

 午前9時55分、1機が神戸ヘリポートを離陸。管制塔とパイロットのやりとりが耳に入る。「現場上空はすでにヘリ8機が旋回中」。8機も? 状況がのみ込めなかった。

 午前10時ごろ現場上空に到着した。見下ろすと、マンションの壁にひしゃげた銀色の物体が張り付いている。