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個性的な打法で安打を量産したオリックスの坂口智隆外野手=2010年6月、スカイマークスタジアム
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個性的な打法で安打を量産したオリックスの坂口智隆外野手=2010年6月、スカイマークスタジアム

■試して磨いた独自の打法

 かつて近鉄、オリックスを率いた故仰木彬監督は、選手のPRにたけていた。代表例は「イチロー」の登録名変更だろう。坂口智隆(38)はオリックスに移った2005年、その名将から「イチロー2世」として飛躍を期待された。

 2人の共通点は、俊足強肩で左打ちの外野手であること。打ち方も似ていた。坂口は振り子打法ではないが、ともに投手方向へ体を移動させて打った。

 投手の球を見極めるため、打者はコンマ数秒でも長く球を見たい。一般的には捕手寄りに立ったり、球を引きつけたりして、そのわずかな時間を得ようとする。2人のように自ら距離を詰める打ち方は一見、不利にも思える。

 坂口本人に聞くと「体が勝手に前に出る」という。後ろで待つ打ち方も試したが、逆に球が速く感じてうまく打てなかった。感覚は人それぞれ。前に出る分、球の見極めを早くして、一番速く感じる球種にタイミングを合わせる。2ストライクと追い込まれても「投手の方へ横歩きしながら目で追うイメージで、球は長く見ています」

 肝心なのは、左肩付近に構えた両手を置き去りにして前に出ること。バットが後ろに残るので、そこから強いスイングができ、球への粘りも生まれる。「泳がされても安打になればいい」。この感覚でヒットを量産していく。

 さらに水口栄二コーチ(54)=現・阪神コーチ=から特殊な打撃を教わった。打球に前回転をかけるという。定位置をつかんだ08年ごろのことだ。

 「バックスピンで飛ばすとはよく聞くが?」と尋ねると「僕の力だと、フェンスを越えずフライになるんです」。前回転なら打球が伸びない代わりに外野手の手前に落ちる。ゴロはバウンドのたびに加速し、野手の間を抜けやすい。徹底した安打狙いの打法だった。

 習得には、肘から下の筋力が不可欠。水口コーチは「ヒーヒー言いながら必死に鍛えていた。レギュラーを取るという気持ちが強かったと思う」と振り返る。

 急にバットの構えを変えたり、振り子打法にしたりと、試合中も試行錯誤を繰り返した。「良ければ覚えておいて練習する。そうやって自分の打撃を築いていった感じです」

 磨いた個性。これが一度の負傷で崩れると誰が予想しただろうか。

 「けががなければ、2千安打は打てた」。オリックスで指導した米村理(おさむ)さん(63)=現・ノースアジア大明桜高コーチ=は、そう言って惜しんだ。=一部、敬称略=

【バックナンバー】
(4)飛躍。
(3)少年の苦悩。
(2)原点。
(1)苦しくても。

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