東京都心に近い利便性と開放的な景観が魅力で、タワーマンションが林立する江東区豊洲。公園や商業施設が広がる水辺の街は、関東大震災のがれきを埋め立てて作られ、日本の産業を支えてきた工場地帯だった。今年、旧晴海鉄道橋が遊歩道へと生まれ変わり、その歴史を伝えている。
新交通システムゆりかもめの豊洲駅を降りると周囲にそびえ立つタワマン群に圧倒される。晴海運河沿いの公園では、カップルや保育園児たちが散歩中だった。
公園に隣接する、屋上部分が曲線を描く建物は「がすてなーに ガスの科学館」(入場無料)。体験型の展示を通じ、多様なエネルギーについて考える施設だ。科学館の1階では祖父母と訪れたという5歳の男の子が空気入れのポンプを押し、ガスを模したボールが地下の管を通って家庭まで送られる様子を体感。石炭や石油などの有限性や環境負荷について砂時計などで解説する展示に見入っていた。同館は社会科見学や修学旅行先としても人気という。
商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」方面へ。家族連れでにぎわうエリアに、ドックや跳ね橋、いかりが残り、昭和期、広大な造船所があった歴史を伝える。前身が造船業の重工大手IHI本社にある「i-muse」でその歴史に触れられる。
ジョギングする人とすれ違いながら舗装された遊歩道を北へ歩くと、緑色のアーチ橋が見えてきた。1957年から89年まで使われた臨港鉄道港湾局専用線晴海線の一部「旧晴海鉄道橋」で、今秋遊歩道に姿を変えた。専用線は高度経済成長期には年間170万トンもの貨物を運び、都市の発展を支えたという。
夕暮れにライトアップされる橋にはウッドデッキが敷かれ、ガラス張りになった部分からレールや枕木が見える。潮風を感じながら渡ると、かつてこの橋を通った列車の、力強い走行音が聞こえるような気がした。
【メモ】「がすてなーに」屋上からは広々とした運河の眺めが楽しめる。

























