2023年に山口県長門市で捕獲されたツキノワグマ(山口県下関農林事務所提供)
2023年に山口県長門市で捕獲されたツキノワグマ(山口県下関農林事務所提供)

 クマによる人身被害が過去最多ペースで増え続けている。例年、クマ出没のピークは冬眠前の10月ごろで、今年はクマの餌となるブナの実が大凶作と予想されている。「九州には野生のクマはいないと聞くけど、本当に遭遇する心配はないの?」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に不安の声が寄せられた。九州でクマが出没する可能性について、専門家に取材した。(西日本新聞社)

■2012年に「絶滅」宣言

 国内の野生のクマは、本州と四国にいるニホンツキノワグマと北海道に生息するエゾヒグマの2種に大別される。九州にも、かつてツキノワグマがいたが、1957年に子グマの死骸が発見されたのを最後に生息が確認されておらず、2012年に環境省が絶滅を宣言した。早くから林業が盛んで、生息に適した自然林が限られていたことなどが要因と考えられている。

 10~13年に熊本、大分、宮崎の3県にまたがる祖母・傾かたむき山系で「クマらしき姿を見た」という複数の目撃情報があったが、生息確認には至っていない。

2023年に山口県長門市で捕獲されたツキノワグマ(山口県下関農林事務所提供)

 一方、関門海峡を挟んで福岡県と隣接する山口県には野生のツキノワグマが生息する。今年7~8月には山口市と周南市の中国自動車道で車とクマが衝突する事故が発生。本州最西端の下関市でも、民家近くに姿を現すなど目撃情報が複数寄せられている。