米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向けた軟弱地盤改良工事の設計変更を巡り、玉城(たまき)デニー沖縄県知事が承認しないのは違法として国が提訴した代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部が知事に承認を命じる判決を言い渡した。

 知事が従わない場合、国が県に代わって承認する。県が最高裁に上告したとしても、国は判決を待たずに工事に着手できる。訴訟による埋め立ての阻止は困難になった。

 代執行は地方の権限を奪う手続きである。本土復帰から半世紀が過ぎても沖縄には米軍基地が集中し、県民は過重な負担に苦しんでいる。地元の同意なく、国が勝訴を盾に工事を強行するのは容認できない。

 設計変更の承認を巡っては、県が国を訴えた訴訟で9月に県の敗訴が確定した。その後、国が承認を勧告、指示しても玉城知事は移設反対の民意を尊重し、応じなかった。

 代執行訴訟では、地方自治法が要件とする「著しく公益を害する」かどうかが主な争点となった。「明確な民意こそが公益」と主張した県側に対し、判決は「県民の心情は十分理解できる」としながらも、普天間の危険性除去が公益と述べた。

 ただ、承認をしても軟弱地盤のため事業完了まで約12年かかり、辺野古移設は早くて2030年代半ばになるとされ、危険の早期解消は困難だ。投じられる国費の膨張も想定される。これが公益にかなうのか。

 さらに問題なのは、沖縄県の自主性と自律性が侵害される点だ。1999年の地方自治法改正で、国と地方の関係は上下・主従から対等・協力に転換した。国が代執行に踏み切れば、初のケースとなる。

 にもかかわらず、訴訟は第1回口頭弁論で即日結審し、移設の是非について実質的な審理はなされなかった。「結論ありき」で自治をないがしろにするような判決は、県民の反発をさらに強めるのではないか。

 辺野古への土砂投入から今月で5年となった。沿岸部南側の埋め立てはほぼ完了したが、軟弱地盤のある東の大浦湾側の方が広く、投入した土砂は全体の約16%にとどまる。後戻りできない状況ではない。

 米軍は辺野古に輸送機オスプレイなどを移す計画だ。同機は先月、鹿児島県・屋久島沖に墜落して搭乗員8人全員が死亡し、世界の全機種の飛行が停止された。国は同機運用の危険性を十分に考慮し、辺野古移設の是非を再検討する必要がある。

 判決は「国と県が相互理解に向け対話を重ね、抜本的解決が図られることが強く望まれている」と付言した。国は沖縄県の自治を尊重し、今こそ玉城知事と真摯(しんし)に向き合わねばならない。