自民党派閥の裏金事件に端を発した「政治とカネ」の問題を受け、参院選でも政治改革は争点の一つとなっている。だが暮らしに物価高が影を落とす中、与野党が競うのは現金給付や消費税減税などの負担軽減策だ。あらゆる政策は政治への信頼がなければ説得力を持たない。各党は遅々として進まない改革への覚悟と手だてを明確に示すべきだ。

 昨秋の衆院選で、自民、公明両党は裏金事件の逆風を受け、少数与党に転落した。その後の国会では「政治とカネ」の問題が重要テーマとなり、使途公開が不要な政策活動費の廃止は決まったものの、金権腐敗の温床との批判が根強い企業・団体献金の見直しは全く進まなかった。

 献金の原則禁止を求める立憲民主党や日本維新の会などに対し、自民が存続を主張して譲らなかったためだ。通常国会では企業・団体献金の扱いについて、与野党は「3月末までに結論を得る」と合意しながら、意見集約ができず、昨秋の臨時国会から3度も結論を先送りした。石破茂首相が指導力を発揮した形跡はうかがえない。衆院選で示された民意に応えておらず、国民への背信にほかならない。

 参院選の前哨戦とされた東京都議選では、自民が過去最低の議席数にとどまる歴史的大敗を喫した。派閥に続き、都議会自民会派でも裏金づくりが発覚した影響が大きい。依然として有権者の関心が高いことを示しており、真相究明と制度の抜本的見直しに後ろ向きな姿勢は参院選でも審判の対象となろう。

 各党の「政治とカネ」を巡る参院選公約は、通常国会での主張に沿ったものとなっている。

 自民は「政治資金の透明化と厳正なコンプライアンスを一層推進」と公約に掲げるが、あくまで献金の温存が前提だ。公明、国民民主の両党は存続を容認し、規制強化や透明性向上を公約する。両党は献金した企業・団体の名称の公開基準額を引き下げるなどの修正案で自民と合意したものの、通常国会での法案提出には至らなかった。

 一方、立民や維新、共産、れいわ新選組、社民、参政の野党各党は、企業・団体献金の禁止や政治資金の透明化の徹底などをそれぞれ公約に掲げている。

 企業・団体献金は30年前の「平成の政治改革」で政党交付金の導入と引き換えに廃止するはずだった。今は二重取りの状況で、廃止が筋だ。

 政治をゆがめてきた金権体質とどう決別するのか。与野党の本気度が問われている。各党や候補者は論戦を深め、抜本改革の速やかな実現に向けた具体的な道筋を有権者に示す責任がある。