立憲民主党などの8野党は、年内にガソリン税の暫定税率廃止を目指す方針で一致した。8月1日に召集される臨時国会に廃止法案を共同提出する。
ガソリン税は本来、1リットル当たり28・7円だが、1974年から暫定税率の名目で上乗せを繰り返し、その額は79年に現在の25・1円となった。半世紀以上も「暫定」が続いている上、上乗せ額が元々の税額に匹敵する水準に迫っているのは、納税者にとって納得しがたい。廃止するのが筋である。
留意すべきは、道路整備に充てるための特定財源だったガソリン税が、2009年に一般財源に変更されている点だ。暫定税率が廃止になれば国と地方を合わせて1・5兆円の税収が失われる。住民サービスなどに影響が出ないよう、代替財源をどこに求めるかについての議論も深める必要がある。
暫定税率の廃止は毎年の税制改正のたびに注目を集めたが、政府、与党は正面から取り組んでこなかった。しかし昨年10月の衆院選で与党の自民、公明両党が過半数を割り込むと、補正予算案への賛成を得るため国民民主党と協議し、同党が掲げた「年収103万円の壁」引き上げと暫定税率廃止を実現することで年末に合意した。
このとき、与党は実施時期を明確にしていない。参院選の公約では、自動車関係税制全体の見直しと併せて議論を進めると明記しており、今年末の税制改正論議を経て26年度からの廃止を想定していたようだ。
野党は通常国会にも暫定税率廃止の法案を提出していたが、参院で過半数を占めていた与党が否決し廃案となった。参院選で物価高対策を掲げ、与党を過半数割れに追い込んだ野党としてはより早く廃止を実現し存在感を示すとともに、野党連携の足がかりにする狙いがある。
一方で指摘しておきたいのは、他の政策との整合性だ。
暫定税率廃止は、温暖化ガスを出さない電気自動車には恩恵が及ばない。環境対策には逆行する側面がある。車を使わない人もメリットを感じにくい。物価高対策にとどまらず、これらの点についても、各党が議論を重ねる必要がある。
衆参両院が少数与党となり、野党が連携すれば法案を成立させることは可能になった。だからといって財源やマイナス面を軽視し有権者に耳当たりのよい政策ばかりに走るのは責任ある態度とは言い難い。
「熟議の国会」にふさわしく、与野党が持続的な社会の実現に向けさまざまな観点から抜本的な制度改革を議論する。暫定税率廃止法案の審議をその試金石にしてもらいたい。