パレスチナを国家承認する動きが加速している。パレスチナ問題の解決に向けた国際会議に合わせ、21日には先進7カ国(G7)で初めて英国とカナダが承認を発表し、22日にはフランスも続いた。新たな承認は少なくとも10カ国に上り、国連加盟の193カ国中、8割に当たる約160カ国が認めたことになる。
これに対し、パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を強行するイスラエルは強く反発し、対抗措置を取る方針を示した。自治区への入植を進めてきたネタニヤフ政権では、ヨルダン川西岸地区の約8割を併合し国家樹立を阻止する構想が公然と語られている。決して許されない暴論だ。
中東の和平には、パレスチナ国家とイスラエルが共存する「2国家解決」が欠かせない。その道を閉ざしてはならない。
パレスチナ国家の樹立には、国境の画定や自治政府の統治能力など高いハードルがある。だからといって手をこまねいていては、実現の道はますます遠のく。国際社会は国家承認を契機に、2国家解決に向けた結束を強める必要がある。
これまで承認に消極的だったG7各国が方針転換した直接のきっかけは、ガザの人道危機の極限化だ。
空爆や地上侵攻などで6万5千人超が殺害され、食料提供の制限で飢餓も深刻化している。国連人権理事会の調査委員会はイスラエルによる「ジェノサイド(集団殺害)」と認定した。一刻も早い停戦に向け、圧力を強めるのは当然だ。
これに対し、日本は現時点では国家承認を見送る方針を表明した。岩屋毅外相は国際会議で「するか否かではなく、いつするのかの問題だ」と述べ、理解を求めた。
国家承認という外交カードを切る時期は高度な判断が必要だ。しかし、今回は国連のグテレス事務総長が「可能な限り多くの国が承認を」と呼びかけている。国際世論に背を向けたとの印象を与えないか。
見送る判断をするなら、経済制裁などあらゆる選択肢を視野に、実効性の高い方策を示すべきだ。
日本の承認見送りは、唯一の同盟国である米国への配慮もあったのだろう。イスラエルの後ろ盾である米国はパレスチナ承認の動きに強く反発し、日本に対し複数の外交ルートで見送りを要請したとされる。
トランプ米大統領は「力による平和」を掲げ、ネタニヤフ氏への逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)への制裁を強めるなど国際秩序を軽視した振る舞いを続けている。力による平和は、いずれ日本の主権を脅かす恐れがある。米国に対しても、国際協調と法の支配の重要性を説くのが同盟国の責務だ。