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 首都圏や関西の都市部でマンション価格が高騰している。

 不動産経済研究所によると、東京23区で2025年度上半期(4~9月)に発売された新築マンションの平均価格は1億3309万円と過去最高を更新した。18年度には現在のほぼ半分の平均6982万円だった。上昇ペースは異常と言える。

 投機目的のマンション取引が価格を押し上げていると指摘される。もはや、子育て世帯など実際に住みたい人が購入できるレベルをはるかに超えている。政府は事態を重く受け止め、適切な対策を考えるべきだ。

 影響は他地域にも広がっている。25年度上半期の首都圏(東京都と神奈川、埼玉、千葉各県)は9489万円、近畿圏が5543万円で、いずれも過去最高だった。神戸市は5095万円、同市を除く兵庫県は6107万円と、どちらも18年度から約3割上がった。

 土地代や建築費、人件費の高騰に歯止めがかからず、人手不足でマンション供給が伸びないことが要因だ。加えて、円安を背景に海外から投資マネーが流入していると言われる。

 対策に動き出した自治体もある。東京・千代田区は今年7月、不動産大手が加盟する業界団体に、市街地再開発事業などで販売される新築マンションは購入者と5年間は転売しない特約を結ぶことを要請した。

 神戸市はタワーマンションの空き部屋を対象に、投資目的などで物件を所有する非居住者を念頭に置いた「空室税」の導入の可否を議論している。

 政府はかつてバブル経済による地価暴騰を沈静化するため、金融機関に対し土地関連の融資総額に上限を設けた。地価は下がったが、バブル崩壊と長期低迷を招いたとされる。価格のコントロールは市場にマイナスの影響をもたらす恐れがある。また、神戸市などの動きに不動産業界から不満の声も上がる。

 しかし、駅前などの一等地のマンションが投機対象となり、空室が目立つようになれば、にぎわいや治安などの面で地域の活力にも影響を与えかねない。マンションの価格高騰が公益性に関わることを踏まえて、官民で有効な手だてを早急に探る必要がある。