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 きょう、1月17日は阪神・淡路大震災の発生から31年になる。死者6434人、行方不明者3人。被災地では鎮魂の祈りがささげられる。復興を遂げた街で爪痕を探すのは難しい。しかし今も多くの人が心に癒えぬ傷を負う。教訓の原点である「命を守る」誓いを新たにしたい。

 年明けから各地で地震が相次いでいる。平時の備えが大切だと改めて痛感する。ただ人口減少の加速や地域コミュニティーの希薄化で、発災時に重要な役割を果たしてきた、近隣住民らが互いに助け合う「共助」の先細りが懸念されている。

 災害が起きた時に頼りになるのは人と人とのつながりだ。少子高齢化が進み、その必要性は一層高まっている。防災の要(かなめ)となる人づくりの視点で命と暮らしを守る輪を広げ、共助が機能する体制を築き直していかねばならない。

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 大災害時に行政の支援が被災者にすぐに届くとは限らない。阪神・淡路では、倒壊した建物から救出された人の約8割は家族や近隣の住民に助け出された。国や自治体による「公助」の限界を浮き彫りにした。

 震災を機に、地域の自主防災組織の重要性が叫ばれ、神戸市では192地区で小学校区単位の「防災福祉コミュニティ(防コミ)」が結成された。救助工具や非常食を保管し、定期的に防災訓練もする。

多様な担い手参加を

 被害の軽減に欠かせない共助の大切さへの理解は深まっているが、問題は担い手の確保だ。苦境に立たされている団体は少なくない。

 神戸市西区の市営地下鉄西神中央駅周辺に広がるニュータウン(NT)6地区の一つ、狩場台。地区内で最も早く、1980年代から入居が始まった。当時多かった子育て世帯はそのまま年齢を重ね、現在の高齢化率は4割を超える。

 昨年11月下旬、狩場台小学校で「西神NT6地区防コミ連絡会」による合同防災訓練があった。各地区が単独で実施するのは負担が大きいことから、2006年から6地区が毎年持ち回りで催している。訓練後には課題を共有し、改善を重ねる。

 今回は狩場台が事務局を担い、住民ら約150人が消火や担架搬送など七つの訓練を体験した。指導役は「市民防災リーダー研修」を受けた地元の住民だ。高齢者が目立つが、親子連れや外国人留学生の姿も見られた。互いに声をかけ合いながら、手順を確認していった。

 狩場台防コミの朝枝健明会長は「若者の参加が少ない。次世代に活動を引き継ぐことが課題」と話す。

 定年延長で60代も働く時代となり、地域団体の役員は全国的に70代が増えている。災害時にどれだけ行動できるか不安もある。女性や若者ら多様な担い手がより柔軟に参加できる仕組みづくりが求められる。

日常との垣根を払う

 災害時に手助けが必要になるのは高齢者や障害者だけではない。妊婦や乳幼児、外国人ら多くの人がそうなる恐れがある。地域の支え合いを後押しするのが行政の責任だ。

 神戸市は昨春、災害対策総点検で防コミへのアンケートを初めて実施し、187団体から回答を得た。

 防コミが実施すべき活動として、65%の団体が「避難所の開設・運営」を挙げた。一方で半数近い団体は「今後の人材確保ができていない」と答えた。避難所の開設・運営は自治体の業務だが、被災時には十分に機能しない事態も想定される。地域の危機感を裏付ける結果と言える。市は支援策として、訓練マニュアルの整備などを打ち出す。

 西神NT・竹の台地区の防コミでは、既に避難所運営などの訓練に取り組んでいる。会長の浜尚美さんは「日常と災害の垣根を取り払う意識を持つことが大事。防災を地域活動の一環と捉えたい」と強調する。

 高齢化などによる身近な防災力の低下は否めない。一人一人が普段から地域活動に参加し、顔見知りを増やしておく。そのことが、災害時に役立つだけでなく、暮らしやすい地域づくりにもつながるはずだ。