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 衆院選はきのう未明に465の全議席が確定し、自民党が316を獲得した。一つの政党が単独で3分の2以上を占めるのは戦後初という。

 参院では連立を組む日本維新の会と合わせても与党が過半数割れしているが、参院で法案を否決されても衆院で再可決に持ち込み、成立させることができる。憲法改正の発議に必要な勢力を衆院で確保し、「高市1強」とも言える状況である。

 重要なのは、この力を首相が何に、どう使うかだ。

 きのうの会見で首相は「大きな政策転換をやり抜けという国民の支持を得た」との認識を示し、「国論を二分する政策」を加速させる意欲を明らかにした。

 しかし選挙戦では、防衛力の増強や改憲など国民の賛否が分かれる政策には踏み込まず、食料品の消費税減税に伴う財源と影響も多くを語らなかった。正面から問わなかった政策を強引に進めれば、首相の好感度で膨らんだ期待は失望に変わりかねない。国会論戦を通じて個々の政策についての説明責任を果たし、丁寧な政権運営を心がけるべきだ。

 消費税減税に関しては「実現に向けた財源とスケジュールを国民会議に諮る」と述べ、夏前には中間とりまとめを示すとした。

 安全保障関連3文書の改定や、武器輸出の歯止めとなる「5類型」の撤廃、改憲などは国民との約束だとして着実に実行すると述べた。

 維新との連立合意には他にも、国家情報局創設や日本国旗を故意に傷つける行為を罰する「日本国国章損壊罪」制定、スパイ防止法など、より保守色の濃い政策が盛り込まれている。いずれも平和国家の足元を揺るがすだけに、「国論二分」のまま突き進むのは許されない。

 国際社会で「力による支配」が分断と混迷を深める中、日本はどんな道を目指すのか。日本のリーダーには、強さだけでなく、異論にも謙虚に耳を傾け、粘り強く合意形成に導く決意と手腕を求めたい。

 立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合は、49議席で公示前の167から大幅に減った。野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表は辞意を表明した。立民出身のベテランが軒並み落選し、立て直しは容易ではない。選挙戦で浸透できなかった中道の理念をどう具現化していくのか、ここからが正念場だろう。

 国民民主党は伸び悩み、参政党や消費税減税に唯一反対したチームみらいが躍進した。ただ、それぞれが政権とどう対峙(たいじ)するのかはいまひとつはっきりしない。与党が巨大であるほど監視機能を高め、政権運営に緊張感をもたらす野党の役割を果たさねばならない。