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 医療の公定価格である診療報酬の6月からの改定内容が決まった。医療資機材の高騰で病院の7割が赤字となる中、物価高を反映できる「物価対応料」を新設した。医師の技術料や人件費に当たる本体部分は30年ぶりの高水準となる3・09%の引き上げとなる。地域医療を支える医療機関の経営改善につなげ、職員の待遇改善も着実に進めねばならない。

 一方で患者の窓口負担は増える。自己負担3割の場合、物価対応料分を含め初診は57円、再診は21円引き上げられる。入院基本料も急性期の患者が一般病棟を利用した場合、1日当たり558円増える。公的医療保険料も将来的に引き上げの必要性が高まるが、現役世代を中心に負担減を求める声は強まっている。

 医療費の抑制に向け、守るべき医療を見極め、診療を効率化したり医療機関の適正配置を進めたりする抜本的な対策が欠かせない。

 今回の改定は、診療所よりも病院に重点的に配分する。救急搬送を24時間受け入れたり、高度な医療を担ったりする拠点施設への報酬を上乗せし、重症患者に対応する「最後のとりで」の機能維持を図る。

 半面、診療所への配分は限定的になる。病院に比べ経営状況が良好とされるためだが、継続的に患者の健康を管理し、高度医療を担う病院に橋渡しする「かかりつけ医」の強化は医療の効率化の上でも重要だ。

 政府は医療法人に関する情報のデータベース化に合わせ、経営実態の把握を目指している。今後の改定ではデータを基にさらに配分にメリハリをつける必要がある。

 政府は十分な効果が見込めない「低価値医療」への支出を抑える方針も打ち出す。風邪に対する抗菌剤の処方が一例である。科学的根拠を基に必要性を精査してもらいたい。

 リハビリを施して在宅医療への移行を支えたり、質の高い訪問診療を提供したりする医療機関へも手厚く配分する。高齢者人口がピークを迎える2040年代に向け、医療と福祉の連携をさらに強めるべきだ。

 今回の改定に合わせ、医師の偏在対策も強化する。診療所が多すぎる地域で新規開業する医師に対し、都道府県知事の要請に従わない場合は診療報酬を減らせるようにする。

 しかし、それだけでは不十分だ。医師の偏在は診療科ごとにもあり、特に産科や小児科、外科を支える人材が不足している。国と自治体、関係機関が協力し、必要な人員を確保できる対策を急ぎたい。

 医療は私たちの健康を守る大切な社会資本である。誰もが必要な医療を受けられる皆保険制度を維持するために、制度改革に向けた国民的な議論が欠かせない。