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 中東情勢の好転が見通せず、石油の供給不安が長引くのに備え、政府はきのう、石油需要を抑える政策の検討に入った。

 日本の石油備蓄量は約8カ月分、254日分と世界最大級の水準にある。イランによるホルムズ海峡の事実上封鎖の長期化を見越して3月中旬から備蓄の放出を始め、5月にも追加放出を検討する。政府は代替策として中央アジアや中南米からの原油調達も模索し、「直ちに供給不安に陥る心配はない」と強調していたが、需給は逼迫(ひっぱく)するばかりだ。

 需要を抑制せねば価格高騰に歯止めがかからず、国際エネルギー機関(IEA)は各国に節約を呼びかける。国内では自民党や経済界からも利用抑制を求める声が出始めた。約200日分の備蓄がある韓国も、公用車の使用制限などに踏み切った。

 現状のペースで放出が続けば、年内にも日本の備蓄は底を突く。政府はその点を踏まえ、石油確保に万全を期さなければならない。

 米国とイスラエルによるイラン攻撃が2月末に始まって以来、政府の打つ手は目先の安心を国民にアピールすることばかりに傾き、大局観を欠く。3月19日に再開したガソリン補助金は一例と言える。

 全国平均で1リットル当たり190円を突破した価格は、補助金で170円台まで低下した。むしろ使用を促すような動きで、供給との不均衡に拍車がかかる。財政負担は週に1千億円に達し、財源となる基金はいずれ枯渇する。新たな財政リスクを招きかねない。

 国民に利用抑制を求めれば、危機感をあおって買い占めなどにつながる可能性もある。政府がこれまで及び腰の姿勢だったのは一定、理解できる。しかし事態が深刻化してから取り組むのでは、抑制策も厳しい内容になり社会活動に混乱を招く。現時点ではガソリンを中心とした節約に絞る考えだが、公共交通の利用や残業削減を促すなど無理のない範囲から始める必要がある。

 備蓄量の少ない東南アジア各国の状況にも注視が必要だ。日本企業の資材調達先はアジア各国に及ぶ。原油の利用が制限されて事業が滞る展開になれば、日本国内の石油供給が従来通りであっても経済活動は阻害される。プラスチック製品や医療資材の材料となるナフサなど、石油由来の資材確保も欠かせない。

 スマートフォンやパソコンなどのIT機器に加え、データの処理に膨大な電力を費やす対話型生成人工知能(AI)も国民生活に浸透しつつある。エネルギーが無尽蔵に存在することを前提にしたような社会の在り方を、私たちもいま一度見直す契機としたい。