家族が担うのが当然とされた介護を社会全体で担うことを目的に、介護保険制度が導入されて今年で26年となる。しかし、制度の理念とは逆に、家族介護を巡る環境は厳しさを増しているのが現状だ。
厚生労働省の調査によると、介護をしていた家族らによる虐待や殺人、心中などで、2006~24年度に少なくとも計486人の高齢者が死亡した。自治体が把握した事例に限られているため、専門家は「氷山の一角と見るべきだ」と指摘する。
調査は06年に施行された高齢者虐待防止法に基づき、毎年行われている。家族や親族らによる虐待が起きる要因は「介護疲れ・介護ストレス」が多く、相談相手がいないなど孤立するケースも目立った。
介護する人と受ける側がどちらも高齢の「老老介護」や、複数の肉親を1人で介護する「多重介護」の問題は一層深刻になっている。多くの人にとって家族介護は人ごとではない。現状と課題を社会で共有し、家族の負担を減らすための体制強化を図る必要がある。
486人が亡くなった要因は、殺人や心中・心中未遂が220人で最も多く、全体の約45%を占めた。ネグレクト(放棄・放置)が132人、虐待は69人。死亡者の7割は女性だった。
一方、「加害者」は483人で、男性が343人と多数を占めた。亡くなった人との関係は息子が219人と最多で夫98人、娘79人、妻41人、息子の配偶者10人だった。家族介護に当たる息子の配偶者が減り、妻に加え夫や息子、娘も担い手になっている状況がうかがえる。
見過ごせないのは、家族だけで介護を抱え込んでいたとみられる事例が多かった点である。09年度以降の調査では、訪問介護などの介護保険サービスの利用状況を尋ねている。それによると、殺人や虐待死の発生時に被害者の54%はサービスを受けていなかった。
公的窓口への相談や介護保険サービスの利用は、決して恥ずかしいことではない。無理に抱え込まず、外部に助けを求めることが重要だ。支援を拒むケースもあろうが、自治体は早期に状況を把握し、適切な福祉サービスにつなげられるよう、働きかけてほしい。
国は高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けられるのを目標に掲げる。だが、その根幹となる訪問介護は、介護報酬の減額でヘルパーの離職に拍車がかかるなど危機的な状況にある。介護報酬の引き上げやそのための財源確保が求められる。超高齢化時代を見据え、負担の在り方についても国民的な議論を深めるときだ。
























