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 核軍縮に関する包括的な国際枠組みである核拡散防止条約(NPT)の再検討会議がきのう、米ニューヨークの国連本部で開幕した。

 約1カ月にわたる会議の成果をまとめる最終文書は過去2回続けて採択に至らなかった。核兵器を巡る国際情勢が不安定さを増す中、今回も採択できなければ、NPT体制の空洞化は必至だ。各国は危機意識を共有し、合意を築いてもらいたい。

 NPTは米国、ロシア、英国、フランス、中国のみに核兵器保有を認め、核軍縮交渉を義務付ける一方、他国の保有を禁じる。1970年に発効し、191の国・地域が加盟する。再検討会議は原則5年ごとに開かれ、条約の運用状況を検証する。

 2015年の前々回は中東の非核化を巡る対立で、前回22年はロシアのウクライナ侵攻が響き、合意できなかった。今回はNPT体制の維持で一致できるかが焦点となるが、見通しは厳しいと言わざるを得ない。

 世界は軍縮どころか、大国による軍拡競争の様相を強めている。核開発阻止を理由とした米国とイスラエルによるイラン攻撃は国際法違反が指摘され、ロシアのウクライナ侵攻も継続している。非保有国を武力で威嚇し、支配しようとする核保有国の横暴は目に余る。

 こうした中、米ロ間で唯一残っていた核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」が2月に失効した。英国やフランスは核戦力の増強方針にかじを切った。中国も核弾頭の保有数を急速に増やしているほか、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威も増している。

 不拡散と軍縮、原子力の平和利用を柱に掲げるNPT体制は正念場だ。核抑止力への依存を深める保有国に対し、核軍縮を求める非保有国は不信を強めている。保有国は再検討会議に真摯(しんし)に向き合い、軍縮の義務と責任を果たさねばならない。

 3回連続で決裂すれば、NPTでは核軍縮はできないとの認識が国際社会に広まり、自衛のためと称して核保有を目指す国が増え、核兵器使用のリスクも高まりかねない。

 唯一の戦争被爆国であり、保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する日本への期待は大きい。だが高市早苗首相は参加を見送り、外務副大臣を派遣した。岸田文雄首相(当時)が出席した前回と比べ、存在感の低下は否めない。「核なき世界」の実現を訴える日本の本気度が疑われ、残念でならない。

 世界の安全保障環境が大きく揺らぐ今こそ、多国間交渉による核軍縮の枠組みを立て直し危機を回避する必要がある。日本は議論を主導し、体制維持に向けて積極的に役割を果たすべきだ。