妊婦が医療機関の担当者だけに身元を明かして子どもを産む「内密出産」について、法を整備し制度化を目指す動きが与野党の国会議員に広がっている。
望まない妊娠などで周囲に頼れない女性は医療者の支援を得られず、高リスクの「孤立出産」に陥りがちだ。追い詰められ、新生児を虐待したり遺棄したりする例も後を絶たない。安心して受診できる仕組みを早急に整え、母子を守る必要がある。
内密出産は2019年、熊本市の慈恵病院がドイツの制度を参考に開始した。同病院は07年、育てられない赤ちゃんを親が匿名で託す「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を開設したが、出産時のリスクを管理できない課題があった。
25年には東京都墨田区の賛育会病院が内密出産と赤ちゃんポストを始めた。大阪府泉佐野市も自治体として初の実施を目指しているが、乳児の養育環境が整っていないとの指摘を府から受け、27年1月のスタートを遅らせることにした。
これらの動きに対し、国は「制度をつくることが内密出産を促すことになる」などの懸念から法整備に慎重な姿勢を崩していない。
22年には厚生労働省と法務省が共同でガイドライン(指針)を作成したが、母親に関する情報の管理や出産費用の負担は医療機関任せだ。母親に身元を明かすよう説得する役割を医療機関に求め、行政関係者の同席が望ましいとするなど、母親に重圧をかける恐れもある。
兵庫県内では神戸市の助産院が17年、赤ちゃんポストの開設方針を発表した。しかし、医師の常駐が困難だったため計画を変更し、不安を抱える妊婦らに24時間対応する「小さないのちのドア」を発足させた。
いつまでも民間や自治体の善意に頼るわけにはいかない。国として制度設計に責任を持ち、内密出産や相談への対応機関を増やしたり、里親委託先を充実させたりするべきだ。
内密出産には子どもが成長して出自を知りたがった場合、どう対応すべきかという法的な問題もある。国の関与は欠かせない。
賛育会病院の運営法人によると、内密出産を開始した昨年3月以降の1年間に7人が利用した。一方、同病院の赤ちゃんポストには新生児20人の預け入れがあり、大半は自宅出産で出血の多い女性もいた。この数字をゼロに近づけることが重要だ。
国会では国民民主党など野党が内密出産を制度化する法案を提出している。与党の日本維新の会も自民に呼びかけ、10月5日召集予定の臨時国会中に提言を取りまとめる予定だ。与野党の垣根を越え、一刻も早い法整備を目指してもらいたい。























