連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

  • 印刷
食堂でくつろぐ広沢好子さん。経済的に苦しいが、穏やかに生きる=尼崎市
拡大

食堂でくつろぐ広沢好子さん。経済的に苦しいが、穏やかに生きる=尼崎市

食堂でくつろぐ広沢好子さん。経済的に苦しいが、穏やかに生きる=尼崎市

食堂でくつろぐ広沢好子さん。経済的に苦しいが、穏やかに生きる=尼崎市

 シリーズ「いのちをめぐる物語」を書き進める私たちの元に、兵庫県尼崎市の介護施設の管理者からメールが届いた。

 「低所得者の最期について取材してほしい。お金のある人は『行き場』がありますから」。そんな趣旨だった。私たちは尼崎に向かった。

 競艇場のすぐ北側、古い住宅街の一角に、その施設はあった。小規模多機能型居宅介護事業所「プチとまとちゃん」という。メールの送り主、西川充さん(59)が案内してくれる。

 3階建てで入居者は1階で暮らす。全部で9部屋あり、室内はフローリングで4畳半ほどの広さだ。2階の食堂に行くと、利用者がくつろいでいた。「生活保護の人も多いですよ。こちらの女性もそうです」。車いすに座った女性がテレビを見ている。

     ◇     ◇

 広沢好子さん(98)=仮名=という。あいさつをすると「お好み焼き、食べに来て」と返ってきた。重度の認知症らしい。

 私たちは広沢さんの親族の女性に話を聞いてみた。

 広沢さんは洋裁学校を出て、洋服の仕立てや洋裁教室で生計を立てた。「ピーク時は50人ぐらい生徒さんがいて、男性より稼いでいたらしいですよ」と教えてくれる。だが既製品が大量販売される時代に入り、少しずつ経済的に苦しくなる。

 20代前半で結婚したが、すぐに離婚。妹の嫁ぎ先が菓子メーカーの創業家だったため支援を受けることになった。だが20年ほど前に会社は経営破綻し、暮らしを支えられなくなってしまった。

 「年金はないんです。保険料も支払っていなくて…。将来ずっと、いい生活が続くと思ってたんでしょうかね」。8年前、生活保護を申請したそうだ。

     ◇     ◇

 「みんなね、いろんなドラマがあるんです」。西川さんが話す。入居者には身寄りがなく独り暮らしの人も多い。

 「プチとまとちゃん」ではこの1年で6人をみとった。簡素な家族葬を挙げ、遺体は斎場へ送られる。すべて葬祭業を営む「優和セレモニー」が執り行った。引き取り手のない遺体の火葬手続きも、よく手掛けるという。私たちは代表の浦西和良さん(52)に連絡を取ることにした。

2019/12/14
 

天気(9月8日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 40%

  • 33℃
  • ---℃
  • 50%

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 34℃
  • ---℃
  • 40%

お知らせ