尼崎市の斎場で無縁仏として弔われた女性の遺体は、火葬までの2週間、大阪市西成区の葬儀会社に安置されていた。ここの社長は、女性の火葬手続きを担当した浦西和良さん(52)の仕事仲間だ。
「1カ月おった人もいてますよ」。私たちが訪ねると、社長が遺体を保管する冷蔵室に案内してくれた。いくつかのひつぎと、布にくるまれた遺体が安置されている。同業の仲間に頼まれ、身内が引き取るかどうか確認できるまで置かれることも多い。
無縁仏となった女性には内縁の夫がいたが、遺体は引き取られなかった。私たちはその理由を聞くため、再び尼崎市に向かった。
◇ ◇
女性の内縁の夫、本田義郎さん(75)=仮名=の住まいは、学生が住んでいそうなワンルームマンションだった。6畳ほどの部屋に独りで暮らす。カーテンレールにシャツが何枚か掛かっている。
肺気腫を患い、心臓も悪い。鼻からチューブが延び、その先は酸素を供給する機械につながっている。ヘルパーが週3回、食事や掃除をしてくれるそうだ。「あいつとは若い時から一緒やったから。そら、寂しいよ」。義郎さんが話し始める。時々、むせて言葉が詰まる。
女性は認知症だった。3年ほど前から症状が現れ、薬の管理も、料理もできなくなった。交通事故の影響もあり、車いす生活が続く。介護は義郎さんが担った。
「最初はな、腹立ったんや。曜日は分からんし、薬も飲まれへんし。でも俺、ちゃんとやったよ。しょっちゅう、公園連れて行ったしな」
女性はショートステイの利用中に体調を崩し、病院に運ばれた。「病院行ったら、もう亡くなっててな。俺、『よー頑張った』って声掛けて」
火葬の日、義郎さんは入院中だった。「ほんまは葬儀、したかったんや。情けないけど、体がな…」。そして言葉を続ける。「遺骨もな、ほんまは手元に置いときたい。でも俺もこんな体で、いつ死ぬか分からん。あいつの骨置いて死んだら、なんか粗末にすることになるんやないかと思ったんや」。私たちは黙って話を聞くことしかできない。
◇ ◇
尼崎での取材を終えた私たちは、兵庫県の東播地方にある古い団地に向かった。独り暮らしの高齢者が多く住んでいると聞いたからだ。
2019/12/16 【募集】ご意見、ご感想をお寄せください2019/12/10 【募集】ご意見、ご感想をお寄せください2019/12/10
 (18)納得の終章、選べれば2019/12/27 (18)納得の終章、選べれば2019/12/27  
 (17)読者の声 孤独死でも笑顔であれば2019/12/26 (17)読者の声 孤独死でも笑顔であれば2019/12/26  
 (16)どんな暮らし 待ってるの2019/12/25 (16)どんな暮らし 待ってるの2019/12/25  
 (15)寂しくない最期だった2019/12/24 (15)寂しくない最期だった2019/12/24  
 (14)身元保証でつながって2019/12/23 (14)身元保証でつながって2019/12/23  
 (13)今日も明日も、家にいたい2019/12/22 (13)今日も明日も、家にいたい2019/12/22  
 (12)「独居は孤独」じゃない2019/12/21 (12)「独居は孤独」じゃない2019/12/21  
 (11)「円」になって支える2019/12/20 (11)「円」になって支える2019/12/20  
 (10)最期は家 わがままですか?2019/12/19 (10)最期は家 わがままですか?2019/12/19  
 (9)親族が孤独死 明日はわが身2019/12/18 (9)親族が孤独死 明日はわが身2019/12/18  
 (8)何とも言えぬ思い残った2019/12/17 (8)何とも言えぬ思い残った2019/12/17  
 
       
					 
								 
								 
								

 
														
														
														
														
														
									
													
 
														
														
														
														
														
												
											 



 

 
 
 
 





