私たちは東播地方の団地の集会所で、民生委員の林牧子さん(70)に話を聞いている。「これまで何人の孤独死に関わってこられましたか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「7人かな。それと私の身内も」
◇ ◇
林さんの兄、植田隆之亮(本名・高史)さんは能楽師で、同じ団地に独りで暮らしていた。20代に入って両親を相次ぎ亡くし、林さんら妹4人を親代わりとなって育てた。50代で心臓を手術し、入退院を繰り返しながら舞台に立ち続けた。
2007年7月のことだ。林さんが部屋を訪ねると、せきを繰り返し、体調が悪そうだった。病院へ行くよう勧めたが、耳を貸さなかったという。翌朝、再び様子を見に行くと、こたつの横で倒れて亡くなっていた。70歳だった。
「兄は舞台で死んだら本望と言ってました。独りで生きてきて、こういう最期も覚悟してたんじゃないかな」。林さんが淡々と口にする。
翌8月、植田さんの四十九日法要を前に、林さんの長姉の夫が別の団地で孤独死する。連絡を受けて部屋に駆け付けると、義兄が倒れていた畳が真っ黒に変色し、異臭が満ちていた。警察官からは「遺体を直接見ない方がいい」と告げられた。
林さんは、近くに入院していた長姉に夫の死を伝える。「姉は死を覚悟したように見えました。もう生きんでもええんとちゃうかって」
長姉はその1カ月後に病院で亡くなった。きょうだいが見舞った後、病室で独り息を引き取ったという。
「なんでこんなにどんどん亡くなるのって。あの時期はつらかった。兄の部屋も1年ほどそのままにしていました」。林さんが目を潤ませた。
◇ ◇
孤独死という言葉に明確な定義があるわけではない。つらい話をした後、林さんが私たちの方を見て力を込めた。「誰にもみとられずに亡くなっていくことが孤独死だと思うんです。人はいつ亡くなるか分からない。突然、死ぬこともある。そう考えると、孤独死って誰にでも起こることです。本当に明日はわが身と思いますよ」
聞きながら、私たちは思った。独り暮らしの人って、どのように人生を終えようと考えているのだろう。
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