独り暮らしでも、最期まで家にいて、穏やかに旅立つことはできるのだろうか。私たちはその答えを求め、岐阜県に向かった。
11月上旬のこと。JR岐阜駅から5分ほど歩くと、「24時間・365日対応 老々介護の方 ひとり暮らしの方」という看板が見えてきた。
着いたのは「小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック」。院長で、日本在宅ホスピス協会会長を務める小笠原文雄(ぶんゆう)医師(71)が、にこやかに迎えてくれる。
孤独死とは異なる「在宅ひとり死」を提唱し、ベストセラーとなった社会学者の上野千鶴子さんとの共著「上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?」に登場する「小笠原先生」、その人だ。
◇ ◇
私たちは小笠原医師と看護師の車に同乗させてもらい、この日退院したばかりという松原芳子さん(63)に会いに行った。一軒家に独りで暮らす。夫はすでに他界し、子どもは独立している。
膵臓(すいぞう)がんで肝臓にも転移があり、10月初めに体調不良で救急搬送された。1カ月ほど入院したが、「家に帰りたい」と強く希望した。
松原さんの顔を見て、小笠原医師は「元気になっちゃった?」と明るく一言。前日に病院で面会した時とは表情が違うと話し、「病は気から」と続けた。1階のリビングに看護師、ケアマネジャー、福祉用具の担当ら計9人が集まる。在宅療養について話し合うカンファレンス(検討会議)の始まりだ。
◇ ◇
9人の自己紹介に続き、小笠原医師が説明した。「腸閉塞(へいそく)とか、いろんなことが起こるかもしれないけれど、痛み、苦しみは早く取れます。歩けなくなっても、その時、その時の悩みは解決します」
松原さんが言う。「24時間対応してもらえるのが、心強いです」
医療や介護のプロが松原さんを囲むように座り、カンファレンスが進んでいく。30分ほどの話し合いで、投薬の量や訪問の頻度が決まった。
その様子をカメラで撮影していた私たちに、小笠原医師が言った。「在宅療養で大事なのは、『○(まる)』になることなんです。つながって、円にならないとね」
松原さんが周囲と目を合わせ、「ふふふっ」と笑った。独り暮らしだけど、独りじゃない。支えるチームがいる。
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