バス通り沿いに集合住宅やファミリーレストランが立ち並ぶ。私たちは神奈川県藤沢市のニュータウンにいる。
都市再生機構(UR)の団地の6階に、「ぐるんとびー駒寄」はある。団地の住民や近所の高齢者が利用する「小規模多機能型居宅介護事業所」だ。中に入ると、利用者が新聞を読んだり、スタッフと話したり、自由に過ごしている。運営会社の菅原健介社長(40)に話を聞く。
菅原さんは東日本大震災の避難所でボランティアをしていた。「避難所は多くの人が集住し、『困った』という声が聞こえやすかった。人が集まってる方が、お互いに支えやすいなあって感じたんです」。その経験から、団地に注目したという。
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利用者とスタッフがルームシェアしていたことがあった。3年ほど前のことだ。「目の前で起こってることに、僕らは何ができるのか? そういうことなんですよ」。菅原さんが話し始める。
自宅から「ぐるんとびー」に通う利用者に、川島かづ子さんという女性がいた。アパートに独りで暮らしていたが、転倒することが増え、その度に大声で悲鳴を上げたことから退去を求められた。
「施設には入所させたくなかったんです。環境の変化が苦手で、幻覚も見えていたんで…」。そう振り返るのは「ぐるんとびー」の管理者、神谷直美さん(53)だ。
年金暮らしだったので、団地の一室でスタッフらと同居し、負担を軽減することになる。これまでに2人のスタッフが一緒に暮らした。最後は高栖(たかす)望さん(26)。「帰ると『だーれー?』って声がするんです。歌声が聞こえてくるときも。人の気配がする生活でした」と懐かしむ。
今年10月中旬、川島さんは「ぐるんとびー」で亡くなった。自室からやってきていすに座ったものの、呼吸が乱れベッドに移る。スタッフが代わる代わる声を掛ける中、大きく息を吸い込み、そのまま永眠した。89歳だった。
親族とともにスタッフも、体を清める「エンゼルケア」に加わった。高栖さんは口紅を塗ってあげた。寂しくない最期だったと思っている。
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11月末、団地で新たなルームシェアが始まった。今回は認知症の女性とシングルマザーの親子の組み合わせだ。
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