少子化が叫ばれる中で、「父親の育児参加」はますます注目を集めています。令和6年度の厚労省の調査では、育休を取得した男性の割合は40.5%と、前年度の30.1%から大きく伸びて過去最多に。ただしその一方で、「日々の育児にどう関わるか」は、依然として夫婦間の温度差を生むテーマでもあるようです。
都内在住のH子さん(30代女性・会社員)は、0歳の長男を育てる現役ママ。育休を取得し、日中はワンオペで育児をこなしています。一方、夫は育休を取得できず、帰宅は22時を回ることがほとんどです。夫が帰宅する時間にはすでに子供は夢の中。休日になると、夫は自分の部屋にこもってばかり…。そんなある夜、ふとした出来事に胸がざわついたといいます。
■遅い時間に帰宅した夫は…
「その日も息子を寝かしつけた後、夫が仕事から帰ってきました。でも、リビングのドアを開けた瞬間、彼は真っすぐダイニングへ。『ただいま』と私には声をかけたものの、寝室には寄り道ひとつなし。息子の寝顔を見ることもなく、まっすぐダイニングテーブルの前に座り、ご飯を食べ始めました」
それだけならまだしも、食事中も子供の話題はゼロ。日中の様子を話しても「あー、そうなんだ」と薄いリアクション。H子さんは「この人、本当に父親なんだろうか…」と、モヤモヤした気持ちになったといいます。
「うちの家は小さい頃から、父親がよく遊んでくれました。私の中では『育児に協力的なパパ』のイメージが当たり前だったんです。なのに自分の子供を持った今、子供と遊ぶのは母親の私ばかり。うちの夫は、子供の顔も見ようとしないで…どこか空虚な気持ちになってしまってました」
■思い切って聞いてみたら…!?
世の中には、H子さんのように「うちの夫、子供に興味がないのでは?」と感じるケースも少なくありません。
「たとえ仕事で疲れていても、子供のことを気にかける気持ちさえ見えたら、私はきっと嬉しかったと思うんですが…」
不安を募らせたH子さんは、ある晩思い切って夫に聞いてみたといいます。
「ねえ、育児にあんまり関わらないで、子供が大きくなったときに後悔しないの?」
すると夫は、ごく自然な口調でこう言ったです。
「してるけど?」
その予想外の言葉に、H子さんは思わず言葉を失いました。じゃあ何をしてるというのかと問うと、返ってきたのはこんな答えでした。
「H子が、毎日子どもの写真を撮りすぎるからさ。通勤の電車とか移動時間に、その写真のデータ整理してるんだよね。そうしたら、H子も助かるでしょ。
何があったかも写真で大体わかるから。寝顔も写真で見てるし、夜にわざわざ寝てるのを起こすリスクを冒してまで見に行かなくてもいいかなって思ってさ。
心配しなくても、俺もちゃんと子供のことを『見ている』よ」
-確かにH子さんはわが子の成長記録をスマホで大量に撮っています。共有ストレージを使って、夫にもその写真を共有していました。それのデータ整理をすることを、夫は「育児参加」と呼び、「俺は子供のことを見ている」と言ったのです。H子さんはすぐに反論しました。
■思わず「母親の本音」をぶつけてみた
「私が言いたいのは、写真じゃなくて今この瞬間の我が子をちゃんと見てほしいってことなの!今ここに生きてる存在として、子供と向き合ってよ!」
思わず声を荒らげてしまったH子さん。夫は少し面食らった様子だったそうですが、その夜から少しずつ様子が変わっていきました。
たとえば帰宅後、まず寝室をそっとのぞき、寝息を立てる息子の顔をじっと見つめるように。休日の朝は「オムツ替えするよ」とぎこちなく言い出し、最近では離乳食のスプーンを握る姿も見られるようになりました。
まだ「立派な父親」と呼ぶには程遠いかもしれません。でも、H子さんの言葉にハッとさせられ、わが子との時間を自分の手で確かめたいと思ってくれたこと。その一歩が、何よりもうれしかったといいます。
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育児における「関わり方」は、人それぞれ。けれど「関わろうとする気持ち」は、きっと伝わるものです。
写真で見る寝顔と、実際に感じるぬくもりの違いに気づいたとき、父親としての時間が静かに動き出すのかもしれません。今しかないこの一瞬を、少しでも一緒に味わえる関係でいたい--そんな願いを胸に、H子さんは今日も家族の時間を大切に重ねています。
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【出典】厚生労働省 令和6年度雇用均等基本調査

























