元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

JKビジネスというのは、JK(女子高生)とお客さんが食事やデートをできるように斡旋するビジネスの総称です。2010年以前は本当の女子高生を雇用し、若い女性を好むお客さんでにぎわっていました。しかし過半数の店が未成年に性的な接客をさせていたことから、あちこちで摘発が相次いだのです。

現在でも「JKリフレ」などは存在しますが、現在はどこも女子高生の雇用は不可。18歳でも学校へ通っていると面接さえ受けられませんから、キャストの平均年齢が20歳前後になっています。つまり“JK風のオトナ”のみが働く場所へ変わったということです。

そんなJKビジネスで実際に働いていた当事者に話を聞くべく、筆者は知人・I子さんを尋ねました。彼女は軽い気持ちで秋葉原へと飛び込み、今でも当時のトラウマに悩まされています。

■JKビジネスを始めたきっかけ

受験に失敗したI子さんはしかたなく二次募集の高校に進むも、まったく学校に馴染めません。GW明けにはすでに登校拒否状態となっていました。当時15歳だった彼女は、アイドルになりたいという夢を持っており、現状を打破したい一心でオーディションに応募します。そして、無事に書類を通過し面接へと挑むのでした(以下『』内、I子さん談)。

『JK散歩・“F”(店名)というバイトのスカウトを受けたのは、アイドルオーディションの帰り道。アキバを歩いていたら声を掛けられて、“お散歩は風俗じゃないから大丈夫。アイドルデビューもさせてあげられそうだ”なんて言われたから、すぐに飛びついたよね』

JKお散歩とは客がお金を払い、キャストと秋葉原を練り歩いたり、観光案内をする疑似デートを味わえるお店のこと。しかし、これはあくまで建前上の営業内容で、オプション料金次第ではカラオケやレンタルルームといった個室への連れ込みが可能でした。つまり、お散歩=自由度の高い派遣型風俗だったのです。

もちろん真面目にやっているお店も一定数存在しますが、お散歩系は高確率で上記のような「裏風俗」でした。真実を知る男性たちが未成年を狙って次々と来店し、キャストも違法なことを理解しながら荒稼ぎをしていたのです。

『私はダラダラ働いていたから、出勤しても週1~2日。学校もムリだし、そもそも“労働”が向いてなくて(苦笑)お金がほしくて鬼出勤するコたちとは稼ぎが雲泥の差だったよ。
バイトをしつつも、ずっと仕事内容に対する抵抗感がぬぐえなかった。オプションも絶対一線を超えたくなかったから、唯一のリピーターとは一緒にカラオケに行って足を触られるくらい。でも、この人は次第に“パパ”になりたがって……。店の稼ぎも渋かったから、つい誘いに乗ってしまったの』

15歳の夏に人生初のパパ活を始めたI子さん。一度崩れた壁を元に戻すのは難しく、その勢いで別のJKリフレ“N”へと移籍します。その頃ちょうど過去の在籍店Fが摘発されました。

■「これが普通」の洗脳……過去に苦しめられる日々

学校になじめないまま中退し、2年生からは定時制高校へ編入。全日制ではなくなったことから日中のヒマな時間が増えてしまいます。アイドルになれたわけでもない、他に面白いことも特になし。相変わらずの日々を送っていたところ、友人の誘いで次はJKリフレ“H”でバイトを始めます。

『本当にこの頃はバカで、店長に“リフレは風俗じゃないから大丈夫”と言われて、“そうだよね”なんて思ってた。でもやっていることはマッサージ中、服に手を入れられるとか風俗と何も変わりない。お触りなんてしょっちゅうだったけど、働くうちに感覚がおかしくなってしまって.......。“これが普通だと思い始め、どんどんマヒしていった』

店舗型リフレ“H”は歓楽街からやや外れたエリアにあったせいか、未成年がいる割に繁盛店ではありませんでした。I子さんは出勤数が少なく、遅刻や当日欠勤が多かったせいで人気が集まらないままです。でも彼女は店長のお気に入りで、暇で稼げない日は“特別待遇”によりお金をもらっていました。

この“特別待遇”とは、部屋で店長とプレイをすることをいいます。1回相手をすれば2万円をもらえるため「0円で帰るよりかはマシ」と我慢をし続けていたそうです。

『自分で言うのもアレだけど店長は私のことが大好きで、店をやめた後もずっと連絡が来ていて。しかも私の宣材写真を自分のデスクに飾っていたくらい……。今考えるとまじキモいよね。でもお金をもらっている以上は文句を言えなかった。他のコに“特別待遇”がバレたらまずいので、いつも奥の部屋でプレイしてササッと2万をもらう。そんな日々だったよ』

退店後、“H”も摘発により閉鎖。在籍中のガサ入れに遭わなかったI子さんはとてもラッキーでしたが、実は今でも過去在籍店のデータが残っているとか。現在の彼女は人前に出る商売に就きましたが、リフレ時代の黒歴史をファンに発見されるのが怖くて仕方がありません。

I子さんは仕事に対してとても真面目ですし、ファンもついて活動は軌道に乗っています。けれども心の中は常に葛藤と後悔が混ざり合い、自業自得と分かっていながら「心の傷は癒えていない」と呟くのでした。

『アイドルにはなれず、今はサブカルチャー系のインフルエンサーをしているけど、その理由も過去が原因なんだよね。清純派アイドルになれても過去がめくれたら速攻でクビだし、企業と契約を打ち切られる可能性が高いとかで、王道ルートはすでに閉ざされていた。マネージャーに説得されて今の道を進み、仕事は楽しいけどやっぱり王道への憧れは今でも大きいよね……。
まさか10代の頃の行動があとあとの人生に悪影響を及ぼすなんて、考えもしなかった。JKビジネスに手を出した時点で可能性が狭まったと思うと、後悔しかない。今となっては夜職とか、そういうものに対してひどい嫌悪感さえある。
目先のお金とラクさだけを追うと大変な目に遭う。気軽に夜職を始めちゃう若いコには、私みたいにならないようにねって本気で思ってるよ』

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。