人間は年老いることで介護が必要となることがあります。それは、どうやら怪異と呼ばれるものたちも同様なようです。漫画家・コイケナツキさんの作品『怪異の介護』は、はじめて介護に挑む女性と怪異たちの気難しさが描かれた作品として、注目を集めています。
古くより人間を恐れさせた存在である『怪異』ですが、生活様式の変化などで忘れ去られてしまうと年老いてしまいます。そんな彼らのために作られた介護施設に、入職希望者の久世観音(くぜかのん)がやってきました。
久世が最初に施設内で見かけたものは、なんとカッパが投げ飛ばされている姿でした。彼女は衝撃を受けますが、どうやら所長のミロクと相撲をとっていたようです。久世は、介護ははじめてですが人助けが好きなため「私、この職が天職だと思うんです!」と目を輝かせて言います。
しかしミロクは、そんな久世に対して「そうか!クビだ」と一蹴しました。ミロクは、久世は介護に向いてないと言いますが、久世の抵抗により判断の機会を得ます。とはいっても、相手は非常に気難しい怪異。ミロクはどうせすぐ辞めると考えているようです。
2人がやってきたのは、マスクを着けて鏡を見続けている口裂け女のもとでした。口裂け女とは昭和の代表的な都市伝説のひとつで、大きなマスクを着け「私キレイ?」と質問し、はいと答えたら耳まで裂けた口を見せる怪異です。口裂け女は、久世に「私キレイ…?」と聞いてきたため、久世は「キレイですよ」と答えます。
しかし口裂け女は歳を取っているため、耳が悪く言葉が聞き取れないようです。その様子にミロクは大笑いし、ちゃんと「キレイ」と伝えないと久世も刃物で口を裂かれるとニヤリと笑ったのでした。
その後、久世は大きく文字を書いたり、花などを使って「キレイ」を投げかけるも、口裂け女は「はぁ?」の一点張りで久世は疲れ果ててしまいます。ミロクは「めんどくさいって思ってもいいんだぞ」と言いますが、久世は「そんなこと考えたらダメですよ」と再び口裂け女のもとに向かいました。
久世は口裂け女の様子を見てみると、自分の言葉を聞こえないふりをしていたことが判明します。久世は自分なりの精一杯優しい言葉を投げかけますが、「うるせえ!」と怒声を浴びました。この理不尽な仕打ちに、久世はつい言い返しそうになりますが、ミロクに止められます。
その後久世は「口裂け女さんに優しくできなかった…!」と泣いていたところ、ミロクから「優しさは武器にならない」と告げられました。ミロクによると、救ってあげている、分かっているつもりという考えは、支配的ではないかと思っているようです。介護は、老いによって失われた機能を補うくらいの心持ちで良いといわれた久世。
ミロクの言葉に、あらためて口裂け女の様子を思い出してみると、まったく口を見せてくれなかったことに気付きます。口先だけではないキレイの伝え方に気付いた久世は、あらためて口裂け女のもとへ向かいました。
変わらず「私キレイ?」と問う口裂け女に、久世は「あなたの顔を見ないことには分かりません」と伝えます。その言葉に意を決した口裂け女は、マスクを外しました。口裂け女は口を開ける力が弱くなり、かつてのような姿ではなくなった自分が醜いとずっと思っていたようです。
そこで久世は、自分の手を使って口裂け女の口角を上げます。その顔を見た口裂け女は「私ってキレイね…」とつぶやくのでした。
今回の体験を通じて、久世は自分は優しい存在ではなかったと思い、仕事の辞退を願い出ます。しかしミロクは、不都合と理不尽の巣窟であるこの場所で、現実を見れる人材がほしかったという思いで久世を採用します。その言葉に、久世はこれからもがんばろうと決意するのでした。
読者からは「介護について考えさせられる」「これからの続きが気になる!」などの声が寄せられています。そこで、作者のコイケナツキさんに話を聞きました。
■優しさでは成り立たない、嫌な部分を見てしまう自分を描きたかった
-同作を考えたきっかけを教えてください
きっかけは本当に単純なんですけど、担当さんと打ち合わせの際、役割が終わった動物たちの動物園の話とかどうですか?と提案された時に動物じゃなく怪異とかどうでしょうか?と言ったのが意外とウケてそのまま読み切り、連載へと繋がりました。
-同作のなかで、特に描きたかったテーマはなんでしょうか
1話のテーマだと、新人介護士の久世が自分は優しい人間だから介護も天職なのだろうと考えているところに優しさでは成り立たない、なんなら自分の嫌な部分を見てしまう、というのが描きたかったところです。
-作品のどのような部分に注目してほしいですか?
老いた怪異を介護するというあまり見ないような内容ですけど、中身は老いとどう向き合うのか、が大きなテーマのひとつなのでそこに注目して頂けると嬉しいです。第1話は無料で読めるので、ぜひ読んでみてください!
(海川 まこと/漫画収集家)
























