三輪卓也(Vo.Gt.)、のん(Key.)、向井ユウスケ(Dr.)
三輪卓也(Vo.Gt.)、のん(Key.)、向井ユウスケ(Dr.)

「きっと僕だけのものではない」

インディーズバンドのアポンタイムが、新曲『The Cox』を9月16日にリリースする。

日常の隙間にある情景や感情を自然体の言葉とメロディで奏でる同バンドは、ボーカル&ギターの三輪卓也を中心に2019年に結成。これまでアルバム2枚とシングル曲を精力的にリリースしてきた。

■目指したレイヤーのある曲

結成から7年。アポンタイムを一段上のフェーズに到達させるべく、2026年は例年に比べてライブ活動を抑え、新曲作りにフォーカスを合わせる活動を選択。その結果、今年初めにリリースした『I Feel Like a Fish out of Water』に対する上々の反響をさらに発展させた新曲『The Cox』が生まれた。

「”Cox”(コックス)とは舵手という意味で、船の舵を取って速度や進路を管理する役割の人のことを指します。この曲の歌詞には、自分たちの音楽活動や人生そのものをなぞらえてみました。自分の内面そのままの、赤裸々で嘘のない言葉を歌詞として前面に出しています」

キャッチーで印象的なメロディは、どこか昔懐かしく切ない音像。初めて耳にしたのにもかかわらず、親しみがじんわり迫る。夏の終わりの静かな夕暮れを思わせるノスタルジックな一曲だ。

“まだ見えない先行き 行き当たりばったり 知らない海を見てみたいね”

“定まらない風向き 打たれてしまう出る杭 なんだかとてもやるせないね”

特徴的な言葉選びと小気味よい語感。前向きのようでありながら、さりげなく内省的な歌詞がメランコリックさに拍車をかける。

「ポップなメロディと軽やかなリズムを意識したので一聴すると爽やかな曲だと思うかもしれません。ところが歌詞を含めてじっくり聴くと実はシビアでネガティブ。楽しく聴けるかと思いきや、胸にグサグサと刺さるものがある。そんなレイヤーのある曲を目指しました。“アポンタイムは明るくてハッピーなサウンドのバンド”と言ってもらえることが多いですが、実は歌詞は暗い曲が多いんです」

■嘘をつくことなく正直に

ネガティブな言葉の響きのその先にあるのは、ほのかな一条の光。そのまぶしさが楽曲にさらなる奥行きを与えている。

“正解のない僕らのstory”

“限界そうかい? それじゃ不本意”

“見切りつけるにはまだまだ早いね”

「知名度の点ではまだまだの僕らですが、7年間ただダラダラとやってきたわけではないぞという自負はあります。そして今、新しいものを生み出していきたい意欲は過去最大。実際、この『The Cox』のリリース準備をしながら、新曲を作り終えました。自分たちの生み出した音楽の力にプラスして、ライブバンドとしての強みをもっともっとつけていけたら」

バンドとしての決意表明を託した歌。ミキシングとマスタリングを終えて改めて聴き直してみると、岐路に立つ人の背中に向けてエールを送るような普遍的な歌になっていた。

「僕の中から出た葛藤の言葉ではありますが、どの年代にも共感してもらえる歌詞になったと思います。どんな立場でもどんな仕事でも、オール・ハッピーとはいかないのが世の常。理想に辿り着くまでの道程に葛藤を抱えない人なんていません。完成した曲を聴いた時に『あ、これは僕だけのものではないのかも…』と思えたのは、嘘をつくことなく正直に生み出すことができたからだと思います」

知られざる”舵手”の歌が広く響くことを願う。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)