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神戸を代表する老舗(しにせ)の百貨店、神戸・元町の大丸神戸店が、震災から二年二カ月ぶりにおおぜいの市民をのみ込んだ。全館営業再開でのオープンに並んだ市民は、徹夜組も含めて約五千人。長く”町の顔”として慕われてきた百貨店の再生に、周囲の商店街も一様に歓迎。春めいた陽気も手伝って、一帯は華やかな雰囲気に包まれた。
トアロードに面した玄関前は、歩行者天国となり、市民ら約五千人が五百メートルの列を作りオープンを待った。最前列にいた神戸市東灘区の官野哲也さん(19)は、前日の夜から並んだといい「全壊した家が四月に完成し、僕は今年大学に合格して新しい人生を迎える。大丸もオープンしてようやく春が来た、という感じです。今日は人生の節目。大学で使う文房具を買います」とにっこり。
スコットランドから招待したバグパイプバンドの音楽が流れる中、定刻より二十分早く正面玄関の扉が開いた。同時に、一列に並んだ社員が一斉に「いらっしゃいませ」。被災地に配慮してテープカットなどセレモニーは控えられたものの、店員らの表情には「やっと再開にこぎつけた」という感慨が浮かぶ。
すぐに店内はごった返し、午前十一時からは入店制限に。神戸市西区の主婦(45)は「震災後は、京都や大阪に買い物に出かけていたが、近いのが一番。これで元町にも活気が戻る」と話し、目当ての売り場へ足早に向かっていた。
店長の森範二常務は「お客さんの笑顔が見られて、神戸店の一同、二年以上も頑張ってきたかいがあった。本当にうれしい」と笑顔で話していた。
一方、周辺の元町やトアロードの商店街では、地域の顔ともいえる百貨店の全面再開が波及効果を生み、買い物客が普段の二割以上も増えた。元町商店街連合会の廣瀬徳造会長は「震災後、大阪に流れたお客さんが戻れば、震災前より一割ほど落ちている売り上げが、逆に二、三割上がるのでは」と期待を寄せる。
トアロード商店街東亜会協同組合の上根保理事長は、大丸神戸店が以前よりファッション部門を強化した点を踏まえ「周辺店舗も含めて元町のブランドイメージがより上がるだろう」と話していた。
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