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被災者の証言集を刊行した牧秀一さん(中央)と、証言者の一人の甲斐研太郎さん(右)=神戸市役所(撮影・中西幸大)
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被災者の証言集を刊行した牧秀一さん(中央)と、証言者の一人の甲斐研太郎さん(右)=神戸市役所(撮影・中西幸大)
証言集「希望を握りしめて」(撮影・中西幸大)
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証言集「希望を握りしめて」(撮影・中西幸大)

 阪神・淡路大震災の被災者の見守り活動を続けるNPO法人「よろず相談室」理事長の牧秀一さん(70)が、四半世紀にわたって交流を深めてきた被災者らの肉声をまとめた証言集「希望を握りしめて」を15日に刊行する。家族の死や自宅の全壊、災害による後遺症…。震災で変えられてしまった一人一人のその後の人生には、希望と苦悩が交錯する。牧さんは「家が再建できたら終わりじゃない。人が震災に遭うとはどういうことかを伝えたい」と語る。(初鹿野俊、金 旻革)

 定時制高校教員だった牧さんは、震災直後によろず相談室を発足させた。復興住宅の訪問など支援を続け、震災20年の2015年からは被災者の生きた証しを残そうと、5年かけて22世帯分計40時間を撮影した。今年3月には6時間の証言映像に編集。さらに全国のドキュメンタリー映像作品が集う映像祭に出品することになり、50分にまとめ、映像祭では優秀賞を受けた。

 映像編集の過程で、証言集作りにも着手。40時間の映像から、18世帯26人の人生を書き起こした。

 神戸市灘区で被災した女性は、当時遺体が並んだ教室の様子を「あのときは『モノ』だったの、人間の死体が」と振り返った。

 同市中央区でレストラン兼自宅が全壊した夫婦は、再建に奔走した日々を思い返し、「大変よ。頑張らなあかんよ、一日一日。そんな泣き言、言うとられへんよ」と証言した。

 11日に同市役所で会見した牧さんは「震災当時のことだけでなく、前にどんな生活があり、後にどうなったか。被災者の人生丸ごとを聞き、忠実に収めた。教育現場で活用してほしい」と語った。

 証言者の1人で、倒壊家屋の下敷きになり足に後遺症を負った甲斐研太郎さん(72)は「私たちの経験が(阪神・淡路以降の)次世代の被災者を勇気づけられるかもしれない。1人でも多くに読んでほしい」と期待を寄せた。

 A5判504ページ、税込み2750円。50分間の映像集のDVD付き。全国のジュンク堂書店などで発売。能美舎TEL080・2079・4692

2020/12/12
 

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